「医師という仕事」に感銘 町医者は常に謙虚な心で生きなければ

町医者の医療・健康コラム

谷光 利昭 谷光 利昭
 谷光院長は一冊の本に深い感銘を受けた
 谷光院長は一冊の本に深い感銘を受けた

 「医者という仕事」という本を読む機会があった。作者の南木佳士(なぎ・けいし)さんは医師である。呼吸器内科医となった作者は、研修医時代に肺癌(がん)の診断、治療の勉強に打ち込んでいたが、300人以上の患者さんの死を目の当たりにし、自分や医学の無力さに打ちひしがれて、心の病からくる強い動悸、焦燥感などが急に出現したそうだ。以降、投薬治療で症状は改善したが、第一線から退かれたという。

 著書には、素晴らしい事がたくさん書かれてあった。中でも、気になる一節があった。収入、地位、名誉といったものが、仮面に過ぎないということを知った時に人は例外なく、優しさを求める。人間も哺乳類であり、優しさを持たない哺乳類は人間とは呼べないと。生の本質を見つめ続けてこられた作者の重くて深い言葉であり、今の日本において教訓となる言葉だと思った。それは、我々、医師にもよくあてはまる。

 作者の言葉を借りれば、偏差値エリートからなる医師の集団で、本当の優しさ思いやりがある医師というのは、どれほどいるだろうか?医師になってからはほとんど必要としない難解な問題をいくつもこなし、ようやく医学部に入る。そこでも莫大な量の勉強をこなし、国家試験合格を目指す。残念ながらそこに、優しさ、知性、品格などを教育されることは概ね(おおむね)ない。偏差値が高い、少し暗記が得意というだけで医師になってしまい、他人の気持ちを汲むことができない、そういった医師になってはいないだろうか?と、作者は自分に問いかける。

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