商業捕鯨再開で大阪の食文化どうなる?老舗クジラ料理店女将の複雑な胸の内

山本 智行 山本 智行
ハリハリ鍋の老舗「徳家」名物女将の大西睦子さん
ハリハリ鍋の老舗「徳家」名物女将の大西睦子さん

 女将の人生はクジラとともにある。勢い余って世界初のクジラ料理本を講談社から出版している。そもそも大阪に鯨食文化が根付いたのは国内有数の捕鯨地、和歌山・太地町に近く、南氷洋捕鯨の寄港地が神戸だったおかげだそうだ。

 「一番は安くておいしかったから。ハリハリ鍋も元々は家庭料理なんですよ。ハリハリとは水菜のこと。おしゃれな名前ですよね」

 徳家のハリハリ鍋は、うす口の出汁と高級部位の尾の身が入っているところが特徴。取材日もサラリーマン客で賑わっていた。特に刺身の「尾の身」や「本皮」、甘くてとろっとした「さえずり煮」の評判がいい。

 「さえずりはクジラの舌で見た目はぞうきんのお化けようなもの。それがおいしい食べ物に変わるんですからね。先人の知恵です」

 店のトレードマークとなっているクジラ親子のイラストはクジラを愛した漫画家・故矢尾板賢吉さんが描いたもの。この先、風はどちらに吹くのか分からない。しかし、浪速の肝っ玉女将は大阪の食文化とのれんを守り続けていく。

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