九州の食は、私にとって博多の地鶏が一番に頭に浮かぶほど鶏料理のイメージが強い。その鶏を使った駅弁を約100年も前から販売している東筑軒が、変わらぬ味、変わらぬうまさを世に送り続けている。その中でも、鶏刻み肉を使ったいわゆる単品のかしわめしではなく、おかずがたくさん入った欲張りな「かしわめしおりお」を食べてみた。容器には現在も変わらず昔ながらの経木を使用している。また、鶏肉とガラでしっかりスープをとり、さらに門外不出の調味料を足して炊かれたご飯はそれだけ食べてもうまい。この調味料の配合は、創業者の妻が開発し、一子相伝の味として代々女性のみに受け継がれているという。久しぶりに食べても舌が味を覚えていて、懐かしさがこみ上げた人もいることだろう。
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鶏刻み肉と錦糸卵に海苔(のり)が弁当箱の半分に敷き詰められていて、どこから食べてもおいしいが、私は3色一度に食べるのが全てがハーモニーを奏でて一番おいしく思う。おかずには卵焼き、かまぼこ、エビ、ウインナー、焼き鮭(ざけ)が入って、三種の神器がそろい、幕の内弁当をほうふつさせる。奈良漬と紅ショウガは箸休めに、ミカンはデザートにちょうどいい量だ。
底面以外が経木で余分な水分を吸い込み、海苔も乾燥を失わず風味をそのまま保ってくれていてうれしい。今では数少なくなった立ち売りにも出会える。
1030円。鹿児島本線・折尾駅「東筑軒」Tel093・601・2345。新幹線車内での販売もあり。