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全国の温泉関係者が注目!「浴槽に届けられた湯」の価値を見える化する温泉評価制度「湯シュラン」とは?「温泉を選ぶことが、温泉を守ることにつながる」未来をめざす

西松 宏 西松 宏

温泉の「浴槽に届けられている湯のクオリティ」に光を当て、その個性や価値を星でわかりやすく伝える温泉評価制度「湯シュラン」が、全国の温泉関係者の間で関心を集めている。

考案したのは、一般社団法人Yuchelin(東京都港区、代表理事・北出恭子さん)。現在挑戦中のクラウドファンディング(10月20日まで)では、公開(9月24日)からわずか2時間で第1目標の1,126,000円(いい風呂)を達成。その後も4,126,000円(よい風呂)、5,260,000円(Go!風呂)と温泉にちなんだ目標金額を次々と達成し、現在は6,102,600円(露天風呂)を目指している(10月16日現在)。

温泉家の北出さんは「始める前は、まだ生まれたばかりの湯シュランという考え方にどれほどの方が共感してくれるかわかりませんでした。ところが、次々と目標を達成し、全国から支援や温かいメッセージが届き続けていて、すごく励まされています」と笑顔で話す。

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温泉関係者の間でいま注目を集めている「湯シュラン」について、北出さんに聞いた。

―「湯シュラン」とはどんなプロジェクトですか?

北出さん(以下同)日本には27,899本もの源泉があります。温泉宿を選ぶとき、料理や客室、景色、接客、知名度など、さまざまな情報がある一方で、実際に自分が浸かる「お湯そのもの」の個性や状態を比較し、選ぶための共通のものさしはこれまでほとんどありませんでした。

料理にたとえると、源泉は「海で泳いでいる魚」、浴槽の湯は「食卓に出された魚料理」。素材が良くても、鮮度管理や調理の方法で味わいは変わりますよね。温泉も同じで、源泉から浴槽までの距離や時間、温度調整、加水、加温、循環、消毒、日々の管理などによって、浴槽で実際に感じる香りや色、肌ざわりは変わります。

だから湯シュランでは、源泉だけでなく、私たちが実際に浸かる「浴槽に届けられた湯」を見ます。「今日は料理で宿を選ぼう」「景色で選ぼう」というのと同じように、「今日はお湯で宿を選んでみよう」という新しい選択肢をつくる。それが湯シュランです。

―このプロジェクトを始めようと思ったのはなぜですか?

きっかけは、ある女性の一言でした。「情報が多すぎて、何を信じたらいいのか、何が正しい情報なのか分からない。結局どこの温泉がいいの? 専門家が選んだ温泉がまとめられているサイトがあったらいいのに」と。

確かにそうだと思いました。今はSNSや口コミサイト、ランキングなど、温泉に関する情報があふれています。でも、温泉に詳しくない方にとって、その中から何を基準に選べばいいのかを判断するのは簡単ではありません。

私は全国各地の温泉を年間300湯以上巡り、泉質や源泉、湯の提供方法などを調査してきました。その中でずっと感じていたのが、歴史ある素晴らしい温泉を守っている小さな宿や共同浴場が、その価値を十分に伝えきれていないということです。だったら、お湯の価値をわかりやすく伝えるものさしをつくろう。そこから湯シュランが始まりました。

―お湯の良し悪しをどう評価する?また、星はどう分かれている?

「源泉そのまま」だけがいい温泉とは単純に考えていません。源泉にはそれぞれ、泉温や湧出量、湧き出す場所、浴槽までの距離など、異なる条件があります。例えば源泉温度がとても高ければ、安全に入浴できる温度まで下げる必要がありますし、源泉から浴槽まで距離があれば引湯や温度管理の工夫が要ります。そこで、それぞれの源泉の個性や条件を踏まえ、その魅力を活かしながら、どんな状態で浴槽まで届けているかを見ます。 

評価の主な柱は、湯の個性、鮮度・提供方法、希少性、安全性・衛生管理、環境・文化的価値の5つです。温泉分析書などを調べた上で、インスペクター(調査員)が現地を訪れて湯の状態や管理を確かめ、評価委員会が共通の基準で審査をおこない評価します。評価の独立性を保つため、施設から審査料や認定料はいただきません。 

星は3段階です。三ツ星:「人生を変えるような湯体験」、二ツ星:「湯そのものを目指して訪れる名湯」、一ツ星:「近くに行けばぜひ立ち寄りたい湯」。ただ、星は温泉を一列に並べて優劣を決めるためのものではなく、それぞれの湯の個性や、そこを訪れる意味を伝えるための認定ラベルだと考えています。

―温泉地や施設にとってのメリットは?

一番大きいのは、これまで伝えにくかった「お湯の価値」が、その施設や地域を訪れる理由になることです。温泉施設では、源泉の管理、配管の維持、湯量や温度の調整、浴槽の清掃など、利用者からは見えないところで多くの手間とコストをかけて湯を守っています。でも、そうした努力は料理や客室などに比べて伝わりにくいんです。

地方の温泉地はいま、旅館や共同浴場の廃業、源泉設備の老朽化、湯守の不足といった課題を抱えています。どれほどの名湯でも、その価値が伝わらず、人が訪れなければ守り続けることは難しくなります。

だから私たちは、「湯の価値が伝わる → その湯を目的に人が訪れる → 施設や地域の収益や誇りになる → 源泉や施設を守る力になる」という循環をつくりたいんです。目的は星を付けることそのものではありません。「湯を選ぶことが、湯を守ることにつながる」仕組みをつくること。そこが一番大切だと思っています。

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湯シュランは、認定施設を発表して終わりではない。今後は、温泉好きが「巡る」「学ぶ」「支える」「守る」という形で参加できるよう、賛助会員になり湯シュランを支えてくれる人たちに向けて、温泉について学べるオンラインセミナー、認定施設の温泉情報を記載した「湯シュランMAP」の提供などを予定している。訪れる人が地域の暮らしや湯に負担をかけないよう「地元ファースト」を掲げた「湯シュラン流 湯をお借りする六か条」も設けている。

創設0期の今年は、まず三ツ星のみに絞り、香りや色、肌ざわりなど、湯の違いを五感で感じやすく、希少性の高い全国21施設をモデルケースとして認定する。来年以降は二ツ星、一ツ星の認定を進め、調査対象を全国に広げていくという。

北出さんは「(クラウドファンディングで)私たちが受け取っているのは支援金だけではなく、『大切な温泉を未来に残してほしい』『温泉の価値がもっと正しく伝ってほしい』『自分も活動に参加したい』という一人ひとりの想いだと思っています。温泉を選ぶことが守ることにつながります。今回寄せていただいた応援を、その未来を実現するための力に変えていきたいです」と話している。

▽「湯シュラン」ホームページ
https://yuchelin.org/

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