文部科学省の勤務時間目標との乖離
公立学校教員の給与などについて定めた給特法は、2025年6月に改正されました。これを受け、文部科学省は2029年度までに達成を目指す勤務時間の目標を示しています。
主な目標は、「時間外勤務が月45時間以下の教職員の割合を100%とし、教員の時間外勤務を月平均約30時間」まで減らすこと、さらに「年間の総時間外在校等時間を360時間以下」にすることです。
しかし、この数値を目標としつつ、具体的な施策が学校現場に依存している結果、目標(数値)と実態に差が出てきている現状が浮き彫りになりました。それを示唆する回答者からの声を一部抜粋します。
「仕事が終わってないのに、はやめの退庁を呼びかけられるとき。保護者への連絡などは、学校の電話から管理職の前で行いたい。家で自分のスマホから、保護者に連絡するときは気が滅入ってしまう」(40代小学校教諭)
「とにかく業務量が多く、とても終えられる量ではないということ。しかしながら、校長が、月の残業時間を平均30時間100%に設定しているうえ、管理職からは、残業時間を減らすよう遠回しに言われる。また、県教委からは、働き方改革が進み、教員の残業時間削減に効果が出ているのは喜ばしいという謎の称賛が時折耳に届く。つまり、仕事を持って帰ってカウントできない残業を行え、または、タイムカードを改ざんして残業時間を減らせという指示であると受け取っている」(50代小学校教諭)
残業時間という数字を減らすことだけが先行してしまうと、実際の業務負担が見えにくくなるおそれがあります。勤務時間を適切に管理することと、現場で仕事が回る仕組みを整えることの両方が求められています。
厳しい勤務実態が明らかになる一方、教員の仕事に喜びを感じる場面についても質問が行われました。
「『これがあるから教員はやめられない!』と思うような強い喜びを感じるのはどんな時ですか」と尋ねたところ、「子どもの成長やできるようになった瞬間」や「子どもたちの笑顔や楽しそうな姿」など、子どもに関係する前向きな出来事を挙げた人が68.1%にのぼりました。
教員の精神的な負担について、「残業時間を減らすより、情緒的疲労を減らしてほしい」と「情緒的疲労を減らすより、残業時間を減らしてほしい」の2つの考え方のどちらを選びますかと聞いたところ、前者に近いと答えた人が60.6%となりました。
ただし、別の設問では異なる傾向も見られました。
今後開発されるデジタルツールについて、「今後、職場の情緒的疲労を減らす新たなデジタルツールが開発されることに期待したい」と「今後、職場の生産性を高める新たなデジタルツールが開発されることに期待したい」のどちらに期待するかを尋ねたところ、後者を重視する回答が65.3%でした。
なお、「研修以外にも自主的に学んでいる」と回答した2043人のうち、80.4%が「俯瞰的に物事を見られている」と回答し、「自主的な学びをしていない」と回答した584人と比べて約28ポイントの差があり、学び続ける姿勢と物事を客観視する力との関連がうかがえました。
教員の働き方を改善するためには、勤務時間を適切に管理することに加えて、業務量や人員配置を見直し、困ったときに相談できる環境を整えることも重要です。
残業を減らすという数値目標と、教員が安心して働き続けられるための心のケア。その両方を進めていくことが、学校現場の働き方改革に求められているのではないでしょうか。