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特養待機3年で85歳母は要介護4に進行 「年金だけでは払えない」と知った有料老人ホーム費用の現実【社会福祉士が解説】

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東京都内に住む田中さん(仮名・58歳)は、母親(85歳)の特別養護老人ホームへの入所を希望して3年が経ちました。「費用が安いから」と特別養護老人ホーム一択で待ち続けていましたが、母親の要介護度は4に進行し、在宅介護の限界を感じています。ケアマネジャーから「近隣の有料老人ホームなら入居可能」と言われましたが、月額費用を聞いて躊躇しているといいます。

特別養護老人ホームの待機者は全国で約27.5万人に上り、有料老人ホームでは施設数が増加している一方、費用面の理由から入居が進みにくいケースも指摘されています。この記事では、介護施設選びの厳しい現実と、費用を抑えながら最適な施設を選ぶためのポイントを解説します。

特別養護老人ホーム待機27.5万人なのになぜ?

厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度・2022年度)」によると、2022年4月時点で特別養護老人ホームの入居待機者数は全国で27.5万人(要介護3以上は25.3万人)に達しています。前回調査(2019年)の32.6万人から5.1万人減少したものの、依然として高い水準です。

しかし一方で、厚生労働省「令和6年(2024年)社会福祉施設等調査」によれば、有料老人ホームの施設数は2025年時点で1万8460施設と、10年前の約1.7倍以上に増加しています。民間の介護施設は増え続けているにもかかわらず、依然として特別養護老人ホームを希望する人が多いのはなぜでしょうか。

その背景には、施設ごとの費用負担の違いがあります。

施設タイプ別の費用比較

介護施設を選ぶ際は、それぞれの制度上の違いを理解することが重要です。特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅は、根拠法や設置主体、契約形態が異なり、利用できる助成制度にも差があります。

このように、施設によって制度上の位置づけが異なるため、後述する「特定入所者介護サービス費」などの軽減制度が利用できるかどうかも変わってきます。

年金だけでは払えない現実

2024年度の年金受給額は、国民年金(満額)で月額約6万8000円、厚生年金を加えた平均は月額約14万円前後です。夫が会社員、妻が専業主婦の夫婦世帯では、合計で月約20万円程度となります。

特別養護老人ホームであれば年金の範囲内で入所できる可能性がありますが、有料老人ホームの月額15万~30万円となると、年金だけでは不足します。特に単身世帯で国民年金のみの場合、費用負担は深刻な問題です。

費用を抑える助成制度の活用法

1. 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
所得や預貯金が一定以下の人は、特別養護老人ホームなどの介護保険施設の居住費・食費が軽減されます。

2. 高額介護サービス費
1カ月の介護サービス自己負担額が上限を超えた場合、超過分が払い戻されます。

3. 医療費控除
特別養護老人ホームの費用の一部は医療費控除の対象となります。

4. 自治体独自の支援制度
市区町村によっては、低所得者向けの家賃補助などの制度がある場合があります。

賢い施設選びのポイント

高齢者施設を選ぶ際には、費用や入居条件だけでなく、ご家族の状況や将来の見通しも含めて総合的に判断することが大切です。しかし、情報が多すぎて何から検討すればよいか分からないという声も少なくありません。
ここからは施設選びで後悔しないための具体的なポイントをご紹介します。

1. 「特別養護老人ホーム一択」思考からの脱却
まず見直したいのが、施設選びの固定観念です。特別養護老人ホームの入所待ち期間は地域によって数カ月~数年と大きく異なります。待機中の在宅介護が困難な場合は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も選択肢に含めて検討しましょう。

2. 複数施設への同時申し込み
特別養護老人ホームは複数の施設に同時申し込みが可能です。待機期間を短縮するため、近隣の複数施設に申し込むことをおすすめします。

3. 入居一時金0円の施設を探す
有料老人ホームでも、入居一時金不要で月額費用のみの施設が増えています。初期費用の負担を抑えられます。

4. 地域を広げて検討
都心部より郊外や地方の施設のほうが費用は安い傾向にあります。通いやすさとのバランスを考えながら、検討エリアを広げてみましょう。

5. ショートステイや小規模多機能を活用
特別養護老人ホーム入所までの待機期間中は、ショートステイやデイサービス、小規模多機能型居宅介護などの在宅サービスを組み合わせて介護負担を軽減できます。

早期の情報収集と資金準備が鍵

田中さんは、特別養護老人ホームの複数施設に同時申し込みを行い、待機順位を確認しました。同時に、ケアマネジャーと相談して近隣の入居一時金0円の有料老人ホームを3カ所見学し、月額18万円で入居可能な施設を見つけました。

「特養一択にこだわっていましたが、母の状態を考えると待てない状況でした」と田中さん。母親の年金約14万円に、田中さん自身が月4万円を負担することで、民間施設への入居を決断しました。入居後は母親の表情も明るくなり、「もっと早く決断すべきだった」と振り返ります。

介護施設選びでは、親の要介護度が上がってから慌てるのではなく、子世代が早めに情報収集を始めることが重要です。

地域にある施設の種類と費用相場を調べることから始め、次に、親の年金額と預貯金を把握し、無理のない資金計画を立てることが重要です。また、利用できる助成制度を確認することで、費用負担を軽減できる可能性があります。複数の施設を見学し、比較検討することで、より納得のいく選択ができるでしょう。

特別養護老人ホームは確かに費用面で魅力的ですが、入所までに時間がかかることを前提に、民間施設も含めて幅広く検討することで、より適切な選択ができます。介護が必要になってから慌てるのではなく、早めの準備と情報収集が、家族全員の安心につながります。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

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