【先輩パパとの会話全文】
育休を取って3カ月。正直、自分は「かなりやってる側の夫」だと思っていた。 掃除、洗濯、おむつ替え。フリーランスの妻が仕事に集中できるよう、家事と育児の「作業」はきっちり半分こなしているつもりだった。 でも、ある日公園で出会った人の言葉で、その自信は粉々に砕け散ることになる。
平日の昼下がり。いつものようにベビーカーを押して公園に行くと、2歳くらいの女の子を遊ばせている先輩パパがいた。
何度か顔を合わせるうちに挨拶をするようになり、ベンチで少しだけ言葉を交わした。
先輩パパ「育休中なんですよね。平日にパパががっつり育児してるの、偉いですよ」
私「いえいえ。妻も仕事があるので、うちは家事も育児も『完全に半分ずつ』って決めてるんです」
私が少し胸を張ってそう答えると、先輩パパは優しくほほ笑んで、こう言った。
先輩パパ「素晴らしいですね。……ちなみに、お子さんの次のサイズの服、もう買いました?」
私「え? いや、それは妻がそろそろ買わないとって言ってました」
先輩パパ「なるほど。じゃあ、おしりふきのストックが残り何個か、今パッとわかります?」
私「えっと……それは……」
言葉に詰まる私を見て、先輩パパは少しだけ困ったように笑った。
先輩パパ「昔の僕と同じですね」
私「昔の……僕?」
先輩パパ「ええ。『言われたことを完璧にこなす』のは、ただの優秀なアシスタントなんですよ。本当の半分って、『考えること』を半分持つことなんです」
考えること。
先輩パパ「シャンプーの残りを気にする。そろそろ爪が伸びてきたかチェックする。離乳食のストックが足りるか計算する。……そういう『頭の中のタスクリスト』、奥さんに全部持たせてませんか?」
衝撃だった。
僕は「目の前にある作業」をこなしていただけで、「気づいて、計画して、管理する」という1番しんどい部分を、すべて妻に丸投げしていたのだ。
妻の頭の中は、自身の仕事と、目に見えない家事・育児のスケジュールで常にパンク寸前だったはずだ。それなのに私は、「半分やってる」と満足げな顔をしていた。自分が恥ずかしくてたまらなくなった。
先輩パパにお礼を言って、急いで家に帰る。 リビングでは、妻が眉間にシワを寄せながらパソコンに向かっていた。
私「ただいま」
妻「あ、おかえり。ごめん、今キリが悪くて……そうだ、おむつのストック切れそうだから、後で買いに行ってもらっていい?」
私「さっき買ってきたよ。あと、おしりふきも。明日の離乳食のストックも確認しておいたし、夕飯は僕が考えて作るから、仕事に集中して」
妻のパソコンを打つ手がピタッと止まった。
妻「え……? 珍しいね。いつもは『何買えばいい?』『ご飯どうする?』って聞いてくるのに」
私「今まで、君に指示を出させるまで動かなくてごめん。これからは『考えること』も、僕がちゃんと半分やるよ」
妻は少しの間きょとんとしていたけれど、やがて目を赤くして、ふっと笑った。
妻「……なにそれ。急にどうしたの。でも……すっごくうれしい。ありがとう」
その顔を見た瞬間、ああ、自分は今まで、彼女にどれだけ見えない負担をかけていたんだろうと、胸がギュッと締め付けられた。 育児の本当の分担とは、「作業」を分けることじゃない。「明日どうするか」を一緒に考えることだ。
夫婦の本当のスタートラインに、今日やっと立てた気がする。