tl_bnr_land

「ドラマみたい…」16年前にクワガタの話を聞きに来た小学生→同じ大学院で博士号へ 並んで撮った写真に「研究者冥利に尽きますね」

山岡 もと子 山岡 もと子

16年前、クワガタムシの研究の話を聞きに来た小学生の男の子が、今、北海道大学の大学院で博士号の取得を目指しています。 当時と同じ建物の前で並んで撮った2枚の写真がXに投稿され、208万回以上表示される反響を呼びました。

投稿したのは、静岡大学理学部生物科学科の講師、後藤寛貴さん(@Cyclommatism)。写真に写るもう1人、柄澤匠さんの了承を得たうえで、後藤さんに話を聞きました。

1枚目の写真は2010年。当時、北海道大学の大学院生だった後藤さんと、小学生の柄澤さんが建物の前に並んでいます。柄澤さんが両手で抱えているのは箱で、後藤さんによると中身はクワガタムシの雑誌ではないかといいます。

2枚目は2026年、同じ建物の前に立つ2人です。時間帯こそ違うものの、構図はほぼそのまま。すっかり背が伸びた柄澤さんは、今や学会で研究発表をする立場になっていました。

「研究者冥利に尽きますね」

投稿には、「長友佑都と久保建英の関係性みたいでめちゃ良いです」「人に出会い、好きなことを見つけて打ち込む幸せな人生ですね」「え、これやばすぎない!?16年後に同じ分野で博士号目指してるって、運命じゃん…!そんなドラマみたいな話ある???」といったコメントが並びました。

後藤さんは「ほとんどの方が肯定的に見てくださっておりましてありがたいかぎりです。『研究者冥利に尽きますね』といったコメントをいただきまして、まさにその通りです」と話します。

「的外れな質問かもしれませんが」

2人が出会ったのは2010年。北海道大学の大学祭で、後藤さんの大学院が開いた「サイエンストーク」(大学院生が自分の研究を一般向けに紹介する催し)に、小学生だった柄澤さんが訪れました。

当時、後藤さんはクワガタムシのオスの大あごが大きく育つしくみを研究していたそうです。質疑に移ると、柄澤さんがすっと手を挙げ、「的外れな質問かもしれませんが」と前置きしたうえで、こう尋ねます。

「オスでホルモンを処理すると大あごが発達するとのことでしたが、メスに処理した場合はどうなるのですか?」

このときの様子は、2022年9月にまいどなニュースで紹介しています。  

後日、柄澤さんは後藤さんの研究室に、クワガタムシの飼育の様子を見学に訪れました。1枚目の写真は、そのときに撮影されたものだそうです。

それぞれの16年

柄澤さんは2018年、北海道大学に進学しました。後藤さんと同じ理学部生物科学科です。2022年春には北海道大学 大学院 環境科学院に進み、その秋の動物学会で研究発表に臨みました。まいどなニュースが2人を取材したのはこのときのこと。後藤さんは柄澤さんの発表を「大学院1年目とは思えない」と評していました。

一方の後藤さんは、北海道大学から国立遺伝学研究所を経て、現在は静岡大学で講師を務めています。所属は変わっても、動物学会や応用動物昆虫学会など、参加する学会は共通しており、顔を合わせる機会は多かったそうです。後藤さんの研究室の学生と柄澤さんは同年代で、学会では一緒に食事に行くことも。今回の撮影のあとも、みんなで食事に行きました。

鋭い質問は、今も

今回の動物学会で、後藤さんは柄澤さんの発表を聞いたといいます。機械学習(コンピューターに大量のデータを学ばせ、規則性を見つけさせる技術)を使った研究で、「いろいろな手法を身に付けているんだな、と思いました」。ただ、それ以上に印象に残ったのは別の場面でした。

「むしろ、発表よりも、柄澤君がさまざまな他の講演に対して、活発に質問している様子が印象的でした。なかなか学会で質問を活発に行える大学院生は多くないので(コロナ禍を境に大きく減った印象があります)、ちゃんと質問できている様子は頼もしくあります」

16年前、大人たちを前に臆せず手を挙げたあの小学生は、今も同じように問いを投げかけていました。

今回、撮影を持ちかけたのは後藤さんでした。柄澤さんが所属する研究室は、16年前に写真を撮った建物の中にあります。お邪魔する機会があり、せっかくだからと声をかけました。学会のハイライトとして投稿した理由を尋ねると、「『バズらせたろ!』と思いまして…笑」。

後藤さんは環境が変わっても、子どもに研究の面白さを伝える活動を変わらず続けています。「現在も、私の講演を聞いたり、私との出会いをきっかけとして、静岡大学理学部生物科学科に入学してきた学生さんが存在します」

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース