30代のAさんは真夏の午前中、生後6か月になる娘をベビーカーに乗せて、近所のスーパーへ買い物に出かけました。強い日差しに加えてアスファルトからの照り返しも気になり、Aさんはベビーカー用の冷却シートとタオルで包んだ保冷剤を娘の背中側に忍ばせておきました。
その後、家に着いて娘をベビーカーから降ろすと、背中がひんやりしていて、保冷剤の当たっていたあたりの肌が赤くなっているのに気づきます。娘自身はぐずっていませんでしたが、Aさんは「冷やしすぎてしまったのかもしれない」と急に不安になりました。
このように、良かれと思って使った冷却グッズが、赤ちゃんの肌への負担になる場合もあるのでしょうか。夏のベビーカー移動での冷却グッズの安全な使い方について、小児科医の山中龍宏さんに聞きました。
冷やしすぎるとどんなリスクが?
ー保冷剤が赤ちゃんの肌に長時間当たると、肌トラブルが起こるリスクはありますか?
はい、注意が必要です。赤ちゃんの肌は大人よりも薄くてデリケートなので、同じ場所に冷たいものが当たり続けると、肌に負担がかかりやすくなります。
いわゆる低温やけどに近い状態で、専門的には凍傷と呼ばれるものです。保冷剤そのものが悪いわけではなく、「同じ場所に長時間当たり続けること」がリスクを生む一番の原因だと考えてください。
ー皮膚を冷やしすぎているサインには、どのようなものがありますか?
まず、保冷剤が当たっている皮膚に触ってみてください。保冷剤と同じ冷たさなら、かなり冷えている状態です。次に見てほしいのは、保冷剤が当たっていた部分の肌の色です。赤みが出ているのは、冷えすぎのサインのひとつです。それよりも進んでしまうと、皮膚が白っぽくなったり、感覚がなくなったりすることもあります。
赤ちゃんは冷たいとうまく伝えられないので、機嫌の良し悪しよりも、こまめに肌の状態を目で確認してあげることが大切です。
ー冷却シートや保冷剤を使う場合、置く位置や包み方、使用時間の目安はありますか?
保冷剤は必ずタオルや布で包んで、直接肌に触れないようにしてください。場所は背中や首まわりが効果的ですが、ずっと同じ位置に固定するのではなく、時々位置をずらしてあげましょう。
時間を厳密に区切るというよりは、抱っこするタイミングやベビーカーを止めたタイミングで、その都度背中に手を入れて確認する習慣をつけておくと安心です。
ー冷却グッズ以外に、夏のベビーカー外出でできる暑さ対策はありますか?
日差しが強い時間帯を避けて、朝の早い時間や夕方にお出かけするだけでもだいぶ違います。ベビーカーは地面に近い分、大人が感じる以上に暑さがこもりやすいので、サンシェードで直射日光を遮ったり、こまめに水分補給をしたりすることも合わせて意識してもらえたらと思います。
◆山中龍宏(やまなか・たつひろ) 小児科医
1974年東京大学医学部卒。東京大学医学部小児科講師、焼津市立総合病院小児科科長、こどもの城小児保健部長を経て、1999年より2025年10月まで緑園(りょくえん)こどもクリニック(横浜市泉区)院長。
1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan顧問、キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁 教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員。