38歳のAさんは小学2年生の息子と幼稚園年長の娘を育てる専業主婦です。7月のある金曜日、息子が通う少年野球チームの練習試合が控え、朝から準備でバタバタしていました。
ようやく落ち着いたのは出発の5分前。急いで水筒を用意しようとすると、息子の水筒には昨日の麦茶が少し残っていました。洗う時間もなく、Aさんは「同じ麦茶だし、少しだから大丈夫だろう」と、冷蔵庫の麦茶をそのまま継ぎ足して持たせました。
それから時は経ち、夕方お迎えに行くと息子が「今日の麦茶ちょっと変な味がした」とつぶやきます。慌てて水筒を覗いても見た目に大きな変化はなく、においもいつもの麦茶でしたがAさんは不安を拭えませんでした。
前日の飲み残しに新しい麦茶を継ぎ足すのは、衛生上問題ないのでしょうか。夏場の水筒管理について、管理栄養士で食品衛生コンサルタントの綾部桂香さんに聞きました。
ちょっとの油断が食中毒のリスクになるかも
ー前日に残った麦茶に、新しい麦茶を継ぎ足して持たせるのは避けたほうがよいですか?
継ぎ足しは避けましょう。一度口をつけた飲み物には、唾液とともに口の中の菌が入り込みます。菌は20〜40度くらいの温度で増えやすく、口をつけた飲み物を常温で置いておくと、短時間でも増殖する可能性があります。
そこに新しい麦茶を足しても、菌がなくなるわけではなく、水筒全体に広がってしまいます。もったいないと感じても、残った麦茶は処分し、水筒をきれいに洗ってから新しい麦茶を入れるようにしましょう。特に子どもは味やにおいの変化に気づきにくいこともあるため、注意が必要です。
ー麦茶・スポーツドリンク・水では、傷みやすさに違いがありますか?
はい、飲み物によって違いがあります。麦茶は原料由来の成分を含むため、口をつけた状態で常温に置くと、菌が増えやすいとされています。
一方、スポーツドリンクやオレンジジュースなどの酸性の飲み物は、菌の種類によっては増えにくい場合もありますが、糖分を含むものも多いため、長時間の常温保存はおすすめできません。水は栄養分が少ないため比較的菌が増えにくい飲み物ですが、一度口をつけた場合は衛生面への注意が必要です。
飲み物の種類にかかわらず、暑い時期はできるだけ早めに飲み切り、長時間常温で放置しないことが大切です。
ー水筒は毎日どこまで洗う必要がありますか?
水筒は、飲み口・パッキン・本体を分解し、毎日洗いましょう。パッキンや飲み口のすき間には飲み物の成分や口の中の菌が残りやすく、洗い残しがあると水筒自体が汚れや菌の温床になることがあります。
スポンジなどでしっかり洗ったあとは、十分に乾燥させることも大切です。湿ったままふたを閉めると、菌が増えやすい環境になります。
また、取扱説明書を確認したうえで、定期的に漂白剤や酸素系クリーナーなどを使ってお手入れをすると、目に見えない汚れやぬめりも落としやすくなります。
ー夏場に水筒を安全に持たせるため、家庭でできる対策はありますか?
水筒には氷を入れるなどして、できるだけ冷たい状態を保ちましょう。菌は20〜40度くらいで増えやすいため、飲み物の温度を低く保つことはリスクを減らすことにつながります。
また、コップ付きの水筒でコップに移して飲む習慣をつけると、口の中の菌が水筒の中に直接入りにくくなります。持ち歩く時間が長い日は、飲み切れる量だけを入れるのもおすすめです。
そして、帰宅したらできるだけ早く中身を空にし、その日のうちに洗ってしっかり乾燥させることも忘れないようにしましょう。
◆綾部桂香(あやべ・けいか) 株式会社食品微生物センター検査事業部 お客様サポート課 課長代理 食品衛生コンサルタント
管理栄養士の知識を活かして、「食」の安全と安心をサポートするコンサルタント。日々熱心に学び続ける姿勢で、多くの顧客から深く信頼されています。
▽株式会社食品微生物センターホームページ
https://www.sbc-web.com/