Aさんは、子どもを週に1回スイミングスクールに通わせています。ある日、同じ時間帯のレッスンで自然と話すようになったママ友に、夏休みのある日「近くの市民プールに一緒に行かない?」と誘われ、これを快諾しました。
当日、受付で会計を済ませたところ、Aさんが請求されたのは、自分と子どもの分で900円でした。一方、隣で支払っていたママ友は、同じく子どもと2人分で450円だったそうです。同じ日に、同じプールで、同じように遊ぶだけなのに、支払う金額は倍だったことにAさんは違和感を抱きます。
この金額差の理由はおそらく「住んでいる市の違い」でした。じつはAさんとママ友の家は歩いてすぐの距離にあるのですが、市が異なっています。
ママ友とはご近所であり、普段は市が異なることを意識して生活していなかったため、これほど差がつくのかとAさんの心に不満が生じはじめます。いっそママ友に入場券をまとめて買ってもらえばよかったのか、そんな思いも頭をよぎりました。
では、なぜ住む市が違うだけで料金が2倍にもなるのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの橋本ひとみさんに話を聞きました。
自治体によっては相互利用も可能なケースも
ー市民プールのような公共施設で、住んでいる市が違うだけで料金が2倍近くになることがあるのですか?
市民プールや図書館、体育館といった公共施設の多くは、その市に住む人が納めた税金で運営費の一部がまかなわれています。建設費や維持管理費、人件費などは利用料だけでは足りず、そこを住民税などが支えているのです。
つまり市民は、利用料とは別に税金というかたちで、すでに費用の一部を負担しています。一方、市外に住む人はその市に住民税を納めていません。利用料を市民と同額にすると、市民だけが二重に負担する形になってしまいます。
この不公平をなくすために、市外の利用者には割増料金を設定している自治体が多いのです。割増の幅は自治体によってさまざまで、Aさんのケースでは市民料金の2倍に設定されていたのだと考えられます。
ーママ友にまとめて支払ってもらえば市民料金になるのでしょうか?
残念ながら、支払う人を変えても料金は変わりません。市民料金が適用されるのは、あくまで実際にその施設を利用する本人が市民である場合だからです。誰がお金を出したかではなく、誰が利用するのかで判断されます。
多くの施設では、受付で市内在住かどうかの確認があります。免許証や保険証などの提示を求められたり、市民専用の利用者カードを作る仕組みになっていたりと、方法は自治体によってさまざまです。ママ友が代表して4人分を購入しようとしても、その場で内訳を聞かれるケースは珍しくありません。
仮に確認がゆるやかな施設だったとしても、市民と偽って利用すればルール違反にあたるため、おすすめはできません。
また、自治体によっては近隣の市と協定を結び、相互に市民料金で利用できるようにしているケースもあります。よく行く施設があれば、料金表や自治体のサイトで市外料金の有無や割引条件を一度確認しておくと、思わぬ出費に驚かずにすむでしょう。
◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ) ファイナンシャルプランナー
銀行勤務12年を経て、現在は複数企業の経理代行をおこなう。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。