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膝の具合が悪い母に代わって息子がATMで出金 キャッシュカード規約には「名義人本人のみ使用可」 家族でも違反ですか?【司法書士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

週末に実家へ顔を出した45歳男性のAさんは、72歳の母親に「悪いけど銀行寄ってきてくれない?足が痛くて行けなくて」と頼まれます。詳しく話を聞くと、数週間前から膝の調子が悪く、近所への外出もままならないようです。

Aさんは母親の依頼を受けると、その場で母親は「引き出してほしいのは3万円。カードはここにあるから、暗証番号は—」と、キャッシュカードの置き場と暗証番号を教えてくれました。

そこでAさんは、その日のうちに近くのATMで3万円を引き出して母親に手渡し、その日は帰宅します。帰宅後にふと「他人の銀行口座から現金って引き出していいのか?」と気になったAさんは、インターネットで調べてみると「キャッシュカードは名義人本人のみ使用可」という銀行規約の文言が出てきました。

実の母親の口座であることや、お金はそのまま母親に渡していることを考慮すると、Aさんが罪を犯したわけではないのは明白です。それでもAさんのなかには「まずかったのかな」という罪悪感が残りました。

では、今後も母親の足が治らない場合や、母親が認知症になってお金の管理が難しくなった場合、銀行に預けたお金はどのように管理すればいいのでしょうか。親のお金との向き合い方について、司法書士の安達莉々さんに話を聞きました。

家族のキャッシュカードでも引き出すのはNG?

ー親から頼まれた場合、家族がキャッシュカードでお金を引き出すことに問題はないのでしょうか?

親本人に頼まれての引き出しは、直ちに違法と評価されるとは限りません。ただし、銀行の規約上はキャッシュカードの使用は名義人本人に限られており、厳密には規約違反にあたる可能性があります。 

実際に銀行側が気づいて口座をロックするケースはまれですが、普段と異なる出金などがあると、金融機関から確認を受けることがあります。 

また見落とされがちなのが、「頼まれた証拠が残らない」という点です。たとえば親が亡くなった後、兄弟からこの引き出しは何?と疑われるケースは少なくありません。

ー親のお金を家族が管理する際、トラブルを防ぐために気を付けたいことを教えてください。

1番のポイントは記録と共有です。引き出した日付・金額・使いみちをノートやスマホのメモに残し、レシートも保管しておきましょう。

さらに大切なのが、他の兄弟への共有です。自分だけが知っている状態が続くと、後から使い込みでは?と疑われることになりかねません。月に1度でも「今月はこれだけ使ったよ」とLINEで報告しておくだけで、家族間の信頼関係を守ることにつながります。

また、引き出したお金は必ず親の生活費や医療費など本人のために使い、自分の財布と混ざらないよう管理するのが鉄則です。親の判断能力が低下してきた場合や管理する金額が大きくなってきた場合は、口約束で済ませず、法的な制度の利用も検討すると安心です。 

ー将来的に認知症などで本人がお金を管理できなくなった場合に備え、元気なうちから準備できることはありますか?

お母さんがまだ元気で判断能力がある今のうちに動けるのは、大きなアドバンテージです。まずは銀行で代理人カードを作る方法があります。所定の手続きをとるため、本人のカードを預かって出金するより安全です。 

ただし、一般的な代理人カードは本人に判断能力があるうちの利用が前提です。認知症などで意思確認が難しくなると取引が制限され、磁気不良・紛失・不審な取引確認をきっかけに手続きが止まることもあります。

より備えるなら、任意後見契約や家族信託も検討できます。任意後見契約は、判断能力低下に備えて任意後見人となる人を定める制度で、家族信託は財産管理を信頼できる家族に託す仕組みです。

どちらも本人の判断能力があるうちの準備が重要です。「まだ早いかな」と思うくらいが、ちょうどいい時期かもしれません。

 ◆安達莉々(あだち・りり) 中野セントラル司法書士事務所/司法書士
任意後見、遺言書作成、家族信託を含む生前対策、相続登記に関する相談などを行う。親の財産管理や相続の場面で、家族が後から困らないよう、分かりやすい説明と実務に沿ったサポートを心がけている。YouTubeでも、相続や生前対策について発信している。
▽中野セントラル司法書士事務所ホームページ
https://nakano-shihou.com/
▽YouTubeチャンネル『相続司法書士・あだちりり』
https://www.youtube.com/@adachi-shihoushoshi-souzoku

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