「男性恐怖症」という言葉から想像していた姿とは違った
東京都在住のSさん(50代)には、大学時代から30年以上付き合いのある友人・Yさんがいます。
Yさんは小さな会社を経営する社長です。仕事では決断力があり、周囲からの信頼も厚い一方で、昔から繰り返し口にする言葉がありました。
「私、男性が苦手なの。男性恐怖症っていうのかな…」
理由を聞くと、「普通に接しているだけなのに好意があると勘違いされる」「少し親切にすると食事に誘われたり、距離を縮めようとしてきたりする人がいる」と話します。
そのためSさんは、若い頃から男性との付き合いに苦労してきたのだろうと思っていました。ただ、長年話を聞くうちに、「Yさんは相手からの好意を少し敏感に受け止めるタイプなのかもしれない」と感じることもあったそうです。
「男性恐怖症」とは思えない行動
ところが、その言葉とは裏腹に、Yさんは男性との食事や打ち合わせの話を楽しそうに語ります。
「昨日は取引先の人と食事だったんだけど、すごく楽しかった」
「今度またあの人と打ち合わせなの。話していると時間があっという間なのよ」
そんな話を聞くたび、Sさんは首を傾げました。
「男性恐怖症」と口にするわりには、男性との時間を心から楽しんでいるように見えたからです。
しかも、話題に上る相手は、身だしなみが良く仕事もできる男性ばかりでした。
「男性恐怖症というより、好みがはっきりしているだけでは…」
Sさんの違和感は少しずつ大きくなっていきます。
長年の違和感が一言で解けた
ある日、Sさんは思い切って尋ねました。
「前から思ってたんだけど、男性のどんなところが苦手なの?」
するとYさんは、
「下心が見えちゃう人っているじゃない」
と答えます。
「やっぱり、そういう経験があったんだ」と納得しかけた次の瞬間、Yさんは「あれ?」と笑いました。
「私、男性恐怖症なんじゃなくて、自分の好みじゃない男性とは距離を置きたくなるだけなのかもしれない」
思いもよらない自己分析に、Sさんは長年感じていた違和感の理由が一気につながりました。
男性全般が苦手なのではなく、自分が距離を縮めたいと思えない相手に身構えていただけだったのです。
「それなら、『男性恐怖症』というより『好みがはっきりしている』ということでは?」
そんな言葉が頭に浮かびましたが、あまりにも本人が納得した様子だったため、口にはしませんでした。
勘違いされて困った経験は実際にあったのでしょう。ただ、それを長年「男性恐怖症」という言葉で表現していたため、自分でも本当の理由を思い違いしていたのかもしれません。
仕事でもプライベートでも、自分の好みには驚くほど正直なYさん。その率直さに呆れながらも、「30年以上付き合っていても、新しい一面を知ることがあるものだ」と感じた出来事だったそうです。