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「あいつ殺したる」 聞こえてきた物騒な会話 広島のローカル線で出会った神戸からの転校生 2人だけの秘密がつむぐ成長物語【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

たとえどんなに小さな学校でも、そこにはかけがえのない青春があります。漫画家・はな羽芽さんの作品『終点まで、ふたりで』は、広島の高校に通う女子生徒たちの小さな青春を切り取った作品です。同作はビッコミのX(旧Twitter)に投稿されると、約8300いいねの注目を集めました。

3学期が開始となったある日。高校1年生の雛が小さなローカル線で登校していると、見知らぬ生徒が乗り込んできます。彼女は電話先に「あいつが来たら、殺したる」と物騒な言葉を話しており、雛はおどろきます。

彼女の名前は蛍といい、今日から雛と同じ学校のクラスメイトとなる転入生でした。蛍は、クラスメイトとは明るく接しており、悪い子ではなさそうだと感じます。しかし2人きりになった途端、蛍は雛に近付き「朝の電車でうちの話聞いた?秘密やで?」と念押ししてきました。

それからも今朝のことが気になったのか、雛にずっと付いてくる蛍。やがて帰りの電車の時刻が迫り、2人は慌てて駅に向かいました。

電車に乗り込むと、雛は1人になろうと試みます。他人と頑なに距離をとろうとする雛でしたが、蛍から「学校で一人でも挨拶交わせる人おったら、ちょっと息しやすくない?」と声をかけられたことがきっかけで、2人は少しずつ仲良くなっていきました。

ある日、クラスで宮島までの校外学習が予定されました。なじめなかったクラスメイトと回るより、その日は2人で動物園へ行くことを計画します。当日、仮病を使い動物園にやってきた2人は、キリンやライオンなどたくさんの動物を鑑賞しました。

とくに2人がみたかったのは、マルミミゾウの赤ちゃんでした。そのかわいさにわくわくして見ていましたが、その隣で蛍は「よかったな…お母さんと一緒で」と涙を流していたのです。その様子を見て、雛はマルミミゾウのペアキーホルダーを渡せませんでした。

しかし、楽しかった動物園の帰り道に事件が起きました。突如駅のホームに男性が現れ、「探したで。どこに逃げたって無駄ってことや」と蛍を殴ったのです。その後蛍は、携帯用ナイフを取り出そうとしていました。蛍がかつて電話先に放った「殺したる」の言葉を思い出した雛は、蛍の手を止め、男性の前に立ちはだかります。

雛は震えながらも「蛍はうちの、友達なんです。これ以上傷つけんといて…」と必死の抵抗をしたのでした。周囲からの報告を受け、男性は駅員に取り押さえられます。その隙を見て、2人は電車に駆け込みました。

男性は蛍のお父さんと自称していましたが、その正体はストーカーと成り果てた母親の彼氏でした。かつて蛍が住んでいた神戸では、このストーカー男のせいで友達がいなくなってしまったそうです。そしてこの男から逃げるために、蛍は母の実家に逃げ隠れ転校してきたのでした。つらいことを今まで1人で抱えていたと知った雛は、思わず涙をこぼしたのでした。

翌日、突然担任の先生から蛍が転校したと報告を受けます。雛は慌ててもう会えないのかと詰め寄ると、担任は意を決して蛍を追いかけるために雛とともに車で追いかけることに。蛍は駅のホームで祖母と抱き合い、今まさに保護シェルターへ向かおうとしています。電車が来る直前、雛はギリギリ蛍のもとへと間に合いました。

雛は、昨日渡せなかったマルミミゾウのキーホルダーを蛍に渡します。2人は「会えてよかった!」と泣きながら友情を誓い、蛍はシェルターへ向かってゆくのでした。

読者からは「2人の友情が尊かった」「広島弁や神戸弁がめっちゃリアル」など、作品の描写に感動する声が寄せられています。そこで、作者のはな羽芽さんに話を聞きました。

物語の舞台は広島県広島市と安佐動物公園、そして芸備線

―作品を描いたきっかけについて教えてください

漫画では、とくに⼼情を描くことが好きです。⾃分の負の感情や経験を昇華させたい気持ちも原動⼒のひとつになっています。この作品では、「⼈の優しさや弱さにつけ込んで優位に⽴とうとする相⼿に屈したくない」という感情から描き始めました。

⼀⽅で、⼈を救うのもまた⼈だと信じています。「誰かと⼿を取り合い、前を向けるようになる物語」という軸に、「電⾞」「エスケープ」「再会」など、⾃分の描きたいシーンを⾁付けしていきました。当初はもっと感情が散らかってまとまりのないネームでしたが、今回初めて編集者の⽅とともに制作し、多⾓的な視点から何度も丁寧に整理していただきました。この漫画も、1⼈ではここまで描けなかったと感じています。

―2人の使う方言や風景が印象的でしたが、モデルとなった場所はあるのでしょうか

作品の舞台は、広島県広島市です。安佐動物公園でマルミミゾウの⾚ちゃんが⽣まれたというニュースを⾒たことを機に取材を始め、そのなかで出会ったのが芸備線でした。オレンジのかわいらしい⾞両や沿線の情景に惹かれ、「この電⾞に乗って登下校する登場⼈物たちを⾒たい」と思いました。

創作であっても、作品の解像度を⾼め、⾃信をもって届けるために、現地取材や⽅⾔の添削など、できる限りの準備をして臨みました。彼⼥たちと同じ⾏動をすることで、より実感のこもった質感で描けたと感じています。10⽉下旬に⾏ったのですが、天気がとても良く、⾞窓から差し込む⽇差しがとても印象的で、漫画でも2⼈に光が差すような描写を意識しました。

また、広島や神⼾の出⾝の読者の⽅々からのご感想を通じて、ご⾃⾝の故郷を⼤切に思っていることを強く実感しました。今後の漫画制作でも、その場所に暮らし⼤切に思う⽅たちに対して誠実に向き合いながら描いていきたいと、⾝の引き締まる思いです。

―2人の今後が気になる作品でした!

今作は、2⼈の⻘春の⼀瞬をすくい取って物語にしました。きっと今⽇もどこかで⼀緒に歩いていると思います。彼⼥たちの友情を読者の皆様がそれぞれの感覚で受け⽌めていただけたら幸いです。

ささやかな願いを挙げるなら、作品に触れた⼤⼈の読者の⽅に、⼦どもたちに対して少しでも優しくなれるきっかけになればと願っています。最後に、読切漫画をお読みいただき、本当にありがとうございました。また読んでいただけるよう、今後も作品づくりへ精進してまいります。

<はな羽芽さん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/hanaume_chan
▽ビッコミ『終点まで、ふたりで』
https://bigcomics.jp/authors/915

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