「今、警察から電話かかってきた」
そんな書き出しでXに投稿された、警察官を名乗る人物からの不審な電話。相手は投稿者の本名や住所、生年月日まで把握しており、「ある事件の押収物から、あなた名義のキャッシュカードが見つかった」と告げてきたといいます。
投稿者は、いったん電話を切って警察へ相談。そこで、最近増えている詐欺の手口だと分かりました。
あまりにも巧妙なやり取りに、投稿には「冷静に電話を切ってよかった」「私も同じような電話が来た」「知らない番号、特に国際電話には注意したい」など、多くの反響が寄せられています。
投稿者のべなむさんに、当時の詳しい状況を聞きました。
「香川県警捜査二課です」重厚な話し方に恐怖
べなむさんは仕事柄、登録していない番号から電話がかかってくることも多く、普段から知らない番号でも電話に出ることがあるそうです。
当時も仕事が立て込んでおり、番号をよく確認しないまま応答しました。相手は自分から名乗ることなく、最初にべなむさんの本名を挙げ、「ご本人の携帯電話でよろしいでしょうか」と確認してきたといいます。本人だと答えると、相手は「香川県警捜査二課の〇〇です」と名乗りました。
「何も悪いことをしている心当たりがなくても、思わずパニックになったのを覚えています」
相手は、マネーロンダリング事件に関わる集団詐欺グループのリーダー格の女が逮捕されたと説明。その女の名前に心当たりがないか尋ねてきました。べなむさんが「知らない」と答えると、さらに驚くような言葉が続きます。
「押収物の中に、あなた名義のキャッシュカードが見つかった。捜査に協力してほしい」
それだけではありません。べなむさんの住所を番地まで正確に読み上げ、生年月日も言い当ててきたのです。
「畳みかけるように個人情報を言い当てられ、頭が真っ白になりました」
べなむさんの本籍地が香川県だったこともあり、「もしかしたら知っている名前なのかもしれない」と思ってしまったといいます。
さらに相手は、「楽天銀行の口座を持っていますよね」「カードを不正利用された経験はありませんか」など、べなむさんに当てはまる質問を重ねてきました。
「今思えば、多くの人に当てはまることなのかもしれません。でも、最初に個人情報を正確に言い当てられた時点で、冷静に判断する力をどんどん失っていました」
相手の話し方も非常に巧妙でした。
「警察の人特有の威圧感というか、重厚感のある話し方で、余計に恐怖心をあおられました。あのときの、心臓が止まりそうになった衝撃と、電話中の動悸は忘れられません」
名前や住所はなぜ知られていた?
べなむさんが最も不気味に感じたのは、相手が本名や住所、生年月日といった個人情報を把握していたことでした。そのため、警察に相談した際、最初に「なぜ個人情報が知られているのか」と尋ねたそうです。
べなむさんによると、対応した警察官からは、現在もいわゆる「名簿屋」が存在し、個人情報が名簿として流通している可能性があると説明されたといいます。
「個人情報保護法があるのに、こんな形で情報が出回っている可能性があることに驚きました」
個人情報を知られていたとしても、それだけで相手を本物の警察官だと信用してはいけない——今回の体験から、べなむさんは強くそう感じています。
詐欺だと疑ったきっかけは「香川まで来られますか」
電話の途中、べなむさんは相手に「香川まで来られますか」と尋ねられました。その言葉が、詐欺を疑うきっかけになったといいます。
「事件の捜査をしているのに、参考人を自腹で遠方まで呼び寄せようとするのかな、と違和感を覚えました」
そこでべなむさんは、「こちらからかけ直します」と伝えて電話を切りました。その後、警察へ相談したところ、「最近よくある手口です」「無視して大丈夫です」「お金の話が出たら、まず詐欺を疑ってください」と伝えられたそうです。
また、べなむさんによると、警察官からは「参考人に電話をして、遠方の警察署まで呼び出すようなことは通常考えにくい」と説明されたといいます。電話を切った後、テレビでも同様の詐欺が紹介されているのを見て、「本当に増えている手口なのだ」と実感しました。
電話番号の末尾は「0110」 教えられた番号は警視庁の代表番号
今回の電話は、番号の見せ方まで巧妙でした。着信番号の末尾は「0110」。警察署の電話番号を連想させる並びになっていたといいます。ただし、べなむさんが後から確認すると、着信は「+1」から始まる国際電話でした。
さらに、「こちらからかけ直すので番号を教えてください」と尋ねたところ、相手が伝えてきたのは、実在する警視庁の代表番号でした。
「最後まで『本物だったのかもしれない』と思わせる巧妙さに、本当に腹が立ちました」
実在する組織名や電話番号を持ち出されたとしても、電話口の相手が本当にその組織の人物とは限りません。いったん電話を切り、自分で公式な連絡先を確認して問い合わせることが重要です。
数日後、別の番号から再び同じ電話
驚くことに、べなむさんのもとにはその後、別の番号から再び同様の電話がかかってきました。前回と同じように本名を挙げ、「べなむさんの携帯でよろしいですか」と尋ねてきたそうです。今度はべなむさんが「違います」と答えると、相手はすぐに電話を切りました。
この経験からべなむさんは、詐欺の手口を紹介するニュースや防犯番組を見て、最新の手口を知っておくことも自衛につながると感じています。
「普通は詐欺だと分かる」では済まされない
投稿には、「普通なら詐欺だと分かるのでは」といった反応もあったそうです。しかしべなむさんは、実際に電話を受けると、想像以上に冷静さを失うと話します。
「本当に判断力をなくすんです。名前や住所、生年月日を正確に言われて、警察らしい話し方で畳みかけられると、『自分は大丈夫』と思っていた人でも怖くなると思います」
また、投稿には同様の電話を受けた人や、実際に被害に遭った人からも多くの声が寄せられました。
「自分だけの特殊な経験ではなく、多くの人に起こり得ることなのだと驚きました」
べなむさんは、今回の体験を通して次のように呼びかけます。
「お金の話が出たら、まず詐欺。自分は引っかからないと思わず、いったん電話を切って、公式の連絡先に自分から確認することを心に刻みたいです」
名前や住所を知られていても、警察を名乗っていても、電話番号の末尾が「110」でも、すぐに信用しないこと。巧妙化する詐欺から身を守るためには、「いったん切る」「自分で調べる」「周囲や警察に相談する」という冷静な行動が大切です。