東京消防庁によると、同消防庁管内においてたばこ火災は2022年中に571件発生し、全火災件数の約15%を占めています。建物内では「居室」や「ベランダ」、建物以外では「建物の敷地内」や「道路」などで多く発生しています。
建物内のたばこ火災件数が減少傾向にある中で近年、建物以外で火種が消えていない吸い殻の投げ捨てにより、出火する火災の割合が増加しています。
たばこのポイ捨ては、単なるマナー違反にとどまらず、罪に問われたり損害賠償を求められたりする可能性もあるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに伺いました。
不法投棄や軽犯罪法違反になることも!
ーたばこのポイ捨ては法的にどのような罪になりますか?
他人の敷地や道路にたばこの吸い殻をポイ捨てする行為は、「軽犯罪法違反」や「廃棄物処理法違反(不法投棄)」に該当する可能性があります。
軽犯罪法では汚物をみだりに捨てた者として拘留や科料が科され、より悪質な廃棄物処理法違反とみなされれば5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金という重い罰則の対象になります。
また、多くの自治体でポイ捨てを禁止する条例が制定されており、過料が科されることもあります。
ー敷地内に何度もポイ捨てされた場合、損害賠償請求はできますか?
何度も繰り返し敷地内にポイ捨てされた場合、民事上の「不法行為」に基づき損害賠償請求を行うことが可能です。清掃費用や精神的苦痛に対する慰謝料などを請求できる可能性があります。
請求を確実に進めるためには、防犯カメラの映像やポイ捨てされた吸い殻の画像、日時や回数の記録など、客観的な証拠をしっかり残しておくことが不可欠です。相手が特定できていれば、警察への被害届提出と合わせて示談交渉を行うことも考えられます。
ー「タバコの吸い殻くらい」という言い訳は法的に通りますか?
法的には一切通用しません。「たかが吸い殻一つ」という自己中心的な主張であっても、他人の敷地を汚損し、火災のリスクを生じさせている事実に変わりはないためです。意図的に他人の敷地や建物へ投げ捨てて汚した場合は、刑法の「器物損壊罪」に問われる可能性もあります。
被害の規模や本人の認識に関わらず、不法行為や犯罪行為として扱われるため、過失や身勝手な言い訳を理由に法的責任を免れることはできないといえます。
ーポイ捨てが原因で火事が起きた場合、加害者はどんな罪に問われますか?
火種が消えていない吸い殻のポイ捨てで火災が発生した場合、刑法の「重過失失火罪」などに問われ、3年以下の禁錮または150万円以下の罰金が科される可能性があります。さらに、他人の建物を焼失させれば「重過失建造物等失火罪」に問われることもあります。
また刑事上の責任にとどまらず、民事上でも重大な過失があったとして、火災によって生じた建物や家財の損害に対して多額の損害賠償責任を負うことになる危険な行為です。
◆北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。