エアコン選びで「広さに合った畳数を選ぶ」のは基本中の基本のはず。それでも家電量販店の店員のひと言を信じて失敗したと感じるケースがあるようです。
新築マンションに引っ越したAさんは、リビング用のエアコンを購入するため家電量販店を訪れました。リビングの広さは14畳あると伝えたところ、店員からは「10畳用で十分ですよ。最近の機種は性能が上がっていますから」と言います。型落ちでお得になっているという説明もあり、Aさんはその場で10畳用のエアコンを購入しました。
設置したのは春先だったため、買った当初はとくに違和感はありませんでした。しかし本格的に暑くなった6月、エアコンを稼働させてもなかなか部屋が冷えないことに気づきます。また、電気代の明細を確認すると、前の家よりも月1万円以上も高くなっていました。
あらためて畳数とエアコンの対応表を調べてみると、14畳のリビングにはやはり14畳用が目安だということがわかったのです。この事実にAさんはあの店員への怒りが抑えきれず「絶対に商品交換してもらう!」と家電量販店に向かうのでした。
ではAさんのように、購入から3カ月が経過したエアコンで店員の説明に問題があった場合、返金や損害賠償を求めることは可能なのでしょうか。 ベリーベスト法律事務所の齊田貴士さんに話を聞きました。
立証は難しいが、まずは販売店に相談を 難しければ消費生活センターへ
ー店員の説明が間違っていたことを理由に、返金や交換を求めることはできるのでしょうか?
消費者契約法では、事業者が契約の勧誘に際して重要事項について事実と異なることを告げ、それによって消費者が誤認して契約した場合、契約を取り消せる可能性があります。
Aさんのケースでは、リビングの広さを伝えたうえで店員から「10畳用で十分」という説明を受け、14畳用ではなく10畳用を購入しています。そのため、重要事項(契約の目的となるものの内容・取引条件で、かつ、契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの)について事実と異なることを告げられているとして、契約の取消しを主張できる余地があるのです。
また、民法上の錯誤取消しで契約を取消せる可能性もあります。ただし、店員の発言内容や購入時の状況を裏付ける記録があるかどうかが重要になります。
ー購入から3カ月経過していますが、時効のような期限はありますか?
注意すべきは、消費者契約法に基づく取消権には期間の制限がある点です。原則として、誤認に気づいて追認できる時から1年以内、かつ契約締結時から5年以内に行使する必要があります。
なお、時間が経つほど当時の状況を証明しづらくなりますし、問題の発生を認識していながら、漫然とその状況を追認していた(是認していた)と評価され得る危険性があり、相手方から反論を受ける可能性もあるため、早めに行動することが重要です。
ー余分にかかった電気代を損害賠償として請求することは可能でしょうか?
店員の説明に問題があり、かつその説明と追加の電気代との因果関係を立証できれば、金銭賠償を請求できる可能性があります。 とはいえ、電気代の増加分が説明ミスによるものか、使用状況や気候条件による影響をどこまで含めるかなどは判断が難しく、立証は容易ではありません。
まずは購入店舗に状況を伝え、当時の説明内容や購入記録を確認しながら相談することをおすすめします。店舗での対応が難しい場合は、消費生活センターに相談すると、解決に向けた助言を受けられることがあります。
◆弁護士 齊田 貴士(さいだ・たかし) 弁護士
神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。