駆け込み乗車に失敗した乗り遅れそうな乗客が、ドアから離れなかったり無理に発車を阻んだりして電車を遅延させてしまうトラブルが後を絶ちません。
「少し遅れただけ」「すぐ発車できるはず」といった個人的な理由による身勝手な行動であっても、鉄道会社や周囲に多大な影響を与えます。このような行為にはどのような法的責任が生じるのか、まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。
無理な発車阻害に成立する犯罪
ー電車から離れず遅延させた場合、現実にはどんな対応や罰則になりますか?
形式上は「威力業務妨害罪」などが考えられますが、数分程度の遅延で直ちに警察に逮捕されるケースはまれです。現場ではまず駅員や警備員による警告が行われます。
しかし、注意を無視して居直ったり、悪質に何十分も発車を妨害したりした場合は、警察が呼ばれて任意同行や書類送検に発展する現実的なリスクがあります。感情的にならず指示に従うことが肝心です。
ー数分の遅延であっても、実際に鉄道会社から損害賠償請求されることはありますか?
法的には損害賠償の対象となり得ますが、現実問題として数分程度の遅延で鉄道会社が個人を相手取り裁判を起こすことは多くありません。損害額の立証や裁判費用、企業のイメージ負担が大きいからです。
ただし、悪質な妨害により後続列車へ大きな影響が出て振替輸送費などが多額に発生した場合は、警察の捜査を経て実費の示談金を請求されるリスクは現実に存在します。
ー「ドアに荷物を挟む行為」も実務上でペナルティの対象になりますか?
うっかり荷物が挟まった程度で即座に罪に問われることは現実的ではありません。しかし、駆け込み乗車のために意図的に何度も鞄や傘を挟み、駅員の注意を聞かずに発車を遅らせた場合は話が変わります。
悪質な妨害と判定されれば、警察への通報や後からの身元特定につながるほか、ドアの故障などを引き起こせば修理費用の賠償を求められる恐れがあります。
ー乗客同士のトラブルで電車を止めた場合、現実にどのような責任を負いますか?
法律上は「共同不法行為」として双方に連帯責任が生じますが、現実の現場ではまず警察が介入して喧嘩の当事者双方が聴取を受けることになります。
鉄道会社から直接請求されなくても、運行を止めた当事者として警察で厳しく追及され、示談交渉の際にもお互いに重い責任を分担し合うことになります。車内でのトラブルは双方にとって大きな不利益となります。
◆北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。