京都府亀岡市の男性が34年間勤めた大手企業を早期退職し、粘土の造形作家として活動している。自分らしい生き方をするために決断し、安定した収入や身分の代わりに「心の余裕と自由さ」を得た。会社を去るか悩む人たちに向け、失業後のリアルな体験をユーモラスに描いた「退職まんが」をインターネットで発信している。
大井町の米井清訓(きよのり)さん(58)。大卒で入社した京都の機械メーカーで製品のデザインに携わった。年を重ね、組織人として会社に求められる「成長」が、人生の目標とズレていく感覚を抱いた。仕事に新鮮味がなくなり、ストレスがたまった。
「辞めたらええやんか。あんたの人生や」と背中を押したのは、妻の明代さん。家族を養うために、定年まで耐え続ける必要はないと伝えた。一定の貯蓄もあり、米井さんは昨年6月に退職した。
現在は2021年に副業として始めたものづくりに取り組む。自然や生き物が好きで、石粉粘土で鳥や昆虫、ネコなどを表現する。少し生意気そうな目つき、丸みのある体形が特徴で、「クスリと笑える日常のオアシスになれば」と思いを込める。これまでに約230点を販売した。
昨年7月から投稿サイト「note(ノート)」で無料公開する漫画では、上司に退職届を提出してからの日々を振り返る。同僚からのさまざまな反応、健康保険の継続手続き、失業給付を受けるためのハローワーク通いなどをゆるい画風で描いている。「正直、面倒なことが多い。辞めたらどうなるか、他の人にも役立つのでは」と語る。
会社を去ってまもなく1年。不安がないわけではないが、米井さんは「後悔はない」と言い切る。頭の片隅に常に仕事があったサラリーマン時代と違い、精神的に解放された。「今は楽しい。好きなことを究めながら、収入にもつなげていけたら」と頬を緩めた。
作品はネットショップ「きよどり工房」で販売し、漫画は「Kiyodori」の名で発信している。