もし結婚相手を『理想』だけで選ぶとしたら、「若くて可愛い女性がいい」と考える男性は少なくないでしょう。井原タクヤさんの作品『運命など存在しないので』では、そんな“理想”と婚活の“現実”が描かれています。同作は『ヤンマガWeb』(講談社)にて連載中でX(旧Twitter)に投稿された際には、約1.3万件ものいいねを獲得し注目を集めました。
「こっちは高い金払ってんだ、間違ってもオバサンを紹介しないで」
結婚相談所『はぴえば』の柏木さんは、成婚率90%を誇る凄腕相談員です。新人・町田ユナは彼の仕事を手伝いとして、初回無料カウンセリングのお客様を迎えに行きました。
本日やってきたのは52歳の目黒さんです。柏木は目黒に結婚相手の希望を聞くと、彼は笑顔で「子ども3人ほしいの だから奥さんは20代がいいな~」と答えます。これに対し柏木は「無理です」と即答するのでした。
目黒は「なんでよ!?」と反論するも、「20代女性があなたと結婚するメリットがないからです」とズバズバ論破します。仮に子どもができても高校生になるころには後期高齢者、奥さんに負担をかけるだけで結婚する『メリット』がありません。
ユナは「せめて40代の方から見ていきませんか」とタブレットを見せますが、「47歳?おばさんじゃん!」「こっちは高い金払ってんだ、間違っても35歳以上のオバサンなんか紹介しないでよ」と目黒は言い張ります。
結婚相談所の『おぢブロック』システムって?
20代との結婚を諦めきれない目黒に対し、柏木は「率直に言うとあなたの(20代女性への)申し込みはブロックされます」と結婚相談所の“内情”を明かしはじめました。
ブロックされる理由、それは『女性にとって苦痛だから』です。男性と女性では『好意』の受け取り方は違います。オジサンからの申し込みばかりでは女性は自信を失ってしまい婚活への士気に影響が出てしまうため、相談員は『そもそも申し込みが女性へ届かない』という“おぢブロック”を張っているのです。
結局その日、目黒の『子ども3人欲しい』という考えは変わりません。その姿にユナは思わず「どうしようもないオッサンですね…」とつぶやきます。それに対して柏木は、「否定するのは簡単です 成婚できそうな人だけ相手にすれば仕事も楽でしょう…しかしそれでは我々が存在する意味がないと思いませんか?」と厳しい指摘をしました。
目黒さんが『結婚』を考えた本当の理由とは?
後日、目黒は再び相談所を訪れます。公園にいた目黒は、ユナに対して「子どもは…いらないのかもしれません 現実的じゃない気がしてきました」と言いました。そして婚活を開始した理由を語りはじめます。きっかけは今から3カ月前、大学の同級生が大腸がんで亡くなったことでした。
これによって目黒は、自分は死ぬまで独りで過ごすことになるのか不安に駆られてしまいます。そして飲みの席で友人と「婚活しよう」と語り合ったのです。
その後間もなく、その友人から「結婚しました」との報告が届きます。相手はなんと、葬式に来ていた同級生だったのです。
これに対して目黒は「くやしい!でも相手はデブのオバハンだ!」という友人に対する嫉妬心から、結婚の目的が『20代のとびきり若い娘と結婚する』ことへとすり替わってしまったのです。
その話を聞いた柏木は、改めて「あなたは結婚したいですか?」と問いかけます。目黒は、「はい…!子どもが持てなかったとしても 僕と一緒に歩いてくれる人と結婚したいです!」と返答しました。
その後目黒は柏木と握手を交わし、結婚相談所への入会を決意しました。
この作品に「最初はキモいオッサンだと思ってたけど応援したくなった!」「自分と重ねて涙が出てきた」などの声がSNS上であがっています。そこで、作者の井原タクヤさんにお話を聞きました。
毒舌は「すべてのお客様に幸せになって欲しい」から
―『運命など存在しないので』の執筆には実際の結婚相談所に取材されたとのことですが、目黒さんも取材の中から構想を得たのでしょうか。
目黒さんについては、構想当初から現在とほぼ同じ形で登場させることを考えていました。ただ「おぢブロック」のように、目黒さんのようなお客様への結婚相談所の具体的な対応については取材で初めて知りましたので、それらを織り込む形で物語を作りました。
―高望みするお客様に対し、ズバズバと物を言う柏木さんの姿がとても痛快でした。柏木さんを描くにあたって、特に意識している点はありますか。
怖い顔で厳しい言葉を浴びせる柏木ですが、その根底には常に「お客様には本質を見失わずに幸せになってほしい」という強い気持ちがあります。「こんな婚活アドバイザーがいたらいいな」「こんな人に仕事を頼みたいな」と思ってもらえるような人間として描いていきたいです。
―『婚活』をテーマに執筆しようと思ったきっかけや、結婚相談所取材で印象に残ったエピソードがあれば教えてください。
昨今、「婚活」や「結婚相談所」といったトピックはSNSで見かけない日はないほど関心を集めていますが、婚活をテーマにしたコンテンツは婚活当事者を中心に据えたものが多く、業界内部の人間の視点から描けば多くの人の目に新鮮に映るのではないかと考えました。また、私は今年の春まで金融業界で会社員として過ごしてきましたので、社会人経験を活かせるかもしれないと思ったのも構想の後押しとなりました。
事業者様への取材で驚かされるのは、外の人間からはわからない仕組みや工夫、そして葛藤がたくさんあるということです。知る楽しみの多い業界だと感じています。
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<井原タクヤさん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/Takuya_Ihara114
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▽『運命など存在しないので』【無料公開中】|ヤンマガWeb
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