中学生の人間関係では、見た目の良し悪しだけで人気者になったり、逆にいじめられてしまったりすることがあります。そのため「整形したい」と考える人も少なくないでしょう。漫画家・うみの韻花さんの作品『娘に整形したいと言われたら』の抜粋エピソードは、整形したいと訴える娘の両親に焦点を当てた物語として、X(旧Twitter)にて注目を集めています。
中学生の娘・ひかりは、友人と比べられることがコンプレックスで二重の埋没手術をおこないました。手術後、しばらくは満足そうにしていましたが、最近は学校にも行かず塞ぎ込んでいる様子です。そしてある日、ひかりは「鼻の整形もさせてください」と母親に頼み込みます。
母は「鼻の手術なんて身体への負担が大きすぎる」と反対しますが、ひかりは「二重になっただけじゃ全然ダメだった」と訴えます。その後、母親は鼻の整形料金を調べますが、必要代金はなんと80万。到底支払えないと思った母は、「整形すれば何でも解決すると思っているんじゃ」と考えました。
後日、ひかりは父親にも鼻の整形をしたいと訴えます。父親は「鼻なんて失敗したら取り返しがつかなくなる」と強く反対します。母親も「外見だけじゃなくて中身も大事なのよ」と話しますが、ひかりが訴えたのは中学生の切実な事情でした。
ひかりによると、今の学校はとにかく外見至上主義で、かわいい子やカッコいい子だけが学校の中心となり先生にも注目されるそうです。それ以外の子はブス呼ばわりされクラスの脇役にすらなれず、見た目だけで中身まで決めつけられ評価されると訴えるのでした。
そして、ひかりはふと家族写真を見て、父の鼻の形が自分の鼻の形に似ていることから「私がこんな鼻なのはお父さんのせいじゃん」とつぶやきました。これに母は、自分たちまで否定された気がして、怒りを抑えきれずに平手打ちしてしまいます。するとひかりは、涙をこぼしながら、自室へ戻っていくのでした。
数時間後に両親は、ひかりに強く言い過ぎたことを謝ろうと、彼女の部屋に入ります。するとそこには、自ら命を絶とうとするひかりの姿がありました。ただちに救急車で運ばれたひかりは、幸いにも命に別状はないようです。医療従事者からひかりの所持品を渡され、母親は「なにか原因が分かるかもしれない」と思いひかりのスマートフォンを見ることにします。
すると、ひかりのSNSには非公開のアカウントがあり、そこには片思いをしていた男子や周りの女子から「鼻が犬のパグみたい」「ぶちゃかわ」など、悪口を言われた記録が記されていました。
この出来事がきっかけで、もう生きているのがつらいと思ったひかりは、「来世はとびきり美人で生まれますように さよなら」と投稿し今回の行動に至ったのでした。
それを知った母親は、大事な娘を助けるために「この子が望む見た目にしてあげなきゃ」と決意します。
読者からは「ルッキズムって恐ろしい…」「自分も整形ばかりしていた時期あったから気持ちが本当にわかる」などの声が寄せられています。そこで、作者のうみの韻花さんに話を聞きました。
『現代社会全体の課題』として客観的に描きたいと考えた
―同作で描きたかったテーマについて教えてください
外見至上主義(ルッキズム)が加速する現代において、「もし自分の子どもが整形したいと言い出したら、親はどう向き合うべきか」という親子の葛藤です。
これまで私は、自身の経験も含め「整形をする当事者」の目線で作品を描いてきましたが、ふと「当事者を一番近くで見守る第三者の目線から見たら、この問題はどう映るのだろう」と考えたのが出発点でした。親の視点に立つことで、整形というテーマを単なる個人の悩みではなく、現代社会全体の課題として客観的に描きたいと考えました。
―『中学生の整形』を描くうえで、力を入れた部分や気を付けた表現があれば教えてください
娘のひかりを「どこにでもいる普通の女の子」として描くことに最も力を入れました。現代はSNSを開けば加工された完璧な顔が溢れ、プチ整形がメイクの延長線上にあるような時代です。
もし、今の時代に10代の頃の私がいたら、きっと彼女と同じように美醜に囚われていたはずです。特別な子が突然おかしくなるのではなく、日常の些細な比較や空気感から徐々に自分の顔が許せなくなっていく過程のリアルさを大切にしました。
また、整形という選択を絶対的な悪として否定することも、美化しすぎることもしないよう、フラットに描くことに気をつけています。
―この作品を、どんな方々に読んでいただきたいですか
容姿に悩んでいる若い世代の方にはもちろんですが、思春期のお子さんを持つ親御さん世代にぜひ読んでいただきたいです。「どうして今の子はこんなにも見た目を気にするのか」という背景を知るきっかけになればと思います。
お話の続きでは、娘の痛ましいほどの切実な思いに触れた母親が、ただ正論で否定するのではなく、ある大きな決断をして共に美容クリニックへ向かうことになります。親の無条件の愛と、ルッキズムという残酷な現実がぶつかり合った先で、親子がどう歩み寄っていくのか。ぜひコミックスで見届けていただけたら嬉しいです。
<うみの韻花さん関連情報>
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▽『娘に整形したいと言われたら』(Amazon)
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