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父の遺産整理中、何十年も会っていない実弟を思い出した50代会社員 親戚の養子になり「相続に関係ない」と思っていたら…兄と同じ相続権【行政書士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

亡くなった父の遺産整理を始めた50代会社員のAさん。残された家族は自分と高齢の母だけだと思い、自宅の土地と建物の名義変更の手続きを進めようとしています。しかし必要書類を集めているなか、Aさんの脳裏にふと、幼いころに実家を去った弟の顔が浮かびました。

弟は幼少期に、跡取りのいない親戚宅へ養子に出されていました。そのためAさんは「あちらの家に引き取られて苗字も変わり、あちらの財産を継いでいるはずだから、うちの相続には関係ないだろう」と楽観視していました。また何十年も音信不通だったこともあり、あえて連絡をとる必要もないと考えていたのです。

ところがある日、相続手続きを依頼した専門家から「養子に出た弟さんにもAさんとまったく同じ相続権がありますよ」と告げられます。このまま弟が自分の権利を主張すれば、母がこれからも今の自宅に住み続けるための生活資金が大幅に削られてしまうかもしれません。

では実際にAさんの弟は相続権があるのでしょうか。北摂パートナーズ行政書士事務所の松尾武将さんに聞きました。

養子に出ても実親との「血縁」は消えない

ー養子に出た子どもに実親の遺産を相続する権利は残るのでしょうか?

ほとんどのケースにおいて、実親の遺産を相続する権利は残ります。多くの人が「他人の家(養親)の籍に入ったのだから、実家の相続権は失われる」と誤解しがちですが、法律上の親子関係は消えるものではありません。

養子縁組をおこなっても、生みの親である実親との血のつながりや、法的な親子関係が途切れることはありません。そのため、実親が亡くなったときには、実子として第一順位の法定相続人になります。もちろん、法定相続分も養子に出ていない他の兄弟と同じく、均等の割合になります。

ー「普通養子」と「特別養子」で相続権はどう違ってきますか?

養子縁組には、大きく分けて「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。一般に養子縁組と呼ばれるものの多くは「普通養子縁組」を指します。これは実親との関係を残したまま、養親とも新たな法律上の親子関係を結ぶ制度です。

一方で「特別養子縁組」は、実親による養育が困難な場合の子どもの福祉の増進を目的とした制度であり、原則として15歳未満の子どもが対象となります。特別養子縁組が成立すると、実親との法的な親子関係は解消されるため、実親の遺産を相続する権利はなくなります。

ー養親と実親の両方から二重に相続することは可能ですか?

「普通養子縁組」で養子に行った子どもの場合、養親と実親の両方から二重に相続することが法的に可能です。養子にとっては、養親も実親も、どちらも法律上の親であることに変わりはありません。したがって、養親が亡くなったときには養親の遺産を相続し、実親が亡くなったときには実親の遺産を相続する権利を同時に持つことになります。

実家に残った長男のAさんからすれば不条理に思えるかもしれませんが、これが現行の民法上のルールです。

何十年も会っていなかったとしても、遺言がされていない場合遺産分割協議をおこなう必要があり、共同相続人である弟さんとの合意の証として実印による署名捺印又は記名押印が不可欠です。「もう他家の人間だから」と対話を避けることができないことから、場合によっては専門家を交えた話し合いの場を持つことが必要となります。

◆松尾武将(まつお・たけまさ) 行政書士
長崎県諫早市出身。大阪府茨木市にて開業。前職の信託銀行員時代に1,000件以上の遺言相続手続きを担当し、3,000件以上の相談に携わる。2022年に北摂パートナーズ行政書士事務所を開所し、相続手続き、遺言支援、ペットの相続問題に携わるとともに、同じ道を目指す行政書士の指導にも尽力している。

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