少子高齢化が進む日本において、シニア世代の「住まい」の確保はますます深刻な課題となっています。不動産情報サービスのアットホーム株式会社(東京都大田区)が実施した「高齢者の賃貸居住」に関する調査によると、貸し手側が抱える「孤独死」への強い懸念と、借り手側であるシニア層の「住まいを失うかもしれない」という切実な不安という、双方の間に横たわる深い溝が浮き彫りになりました。
調査は、同社に加盟している全国の賃貸住宅管理会社632社、および現在賃貸住宅に居住中の要支援状態ではなく、子どもと同居していない60歳以上の男女288人を対象として、2026年2月にインターネットで実施されました。
調査の結果、直近1年間で「高齢であることを理由に入居を断ったことがある」と答えた管理会社は49.2%にのぼり、およそ2社に1社が、シニア層の受け入れを拒否した経験があるという厳しい現状が明らかとなりました。
また、「誰の意向で断りましたか」という質問には、「オーナーの意向」が40.2%、「オーナー・管理会社両方の意向」が45.3%と8割以上に達しています。
さらに、更新を続けるなど、「長年住み続けている入居者の年齢を把握できている」とした管理会社は80.0%。
すでに入居中の高齢者に対し、「更新時などに新たな入居条件を追加することはありますか」という質問には、「契約更新時に保証会社への加入の促進を行っている」「遺品整理や特殊清掃をカバーできる住宅保険への加入を必須にしている」といった意見が見られました。
入居を断る最大の要因となっているのが、オーナーの意向や管理上のリスクであることがわかりました。そこで、「管理会社が単身高齢者の入居において課題(リスク)と感じていること」を聞いたところ、「孤独死」(84.0%)が最も多く、次いで「事故物件化」(38.4%)による資産価値の低下や、退去時の「残置物処理」(37.0%)への不安が挙げられました。
他方、孤独死対策として期待される「見守りサービス」の存在は、90.1%の管理会社が認識しているものの、実際に「物件へ導入している」割合は19.5%と2割に届きません。
ただし、「条件が合えば導入したい」と前向きな姿勢を示す会社は約半数(49.1%)にのぼり、費用面や導入の手間といったハードルの解消が今後のカギとなりそうです。
反対に、導入を考えていない管理会社にその理由を聞いたところ、「オーナーへの費用負担(の交渉)が難しい」「町内会、自治体(の見守り)でまかなえている」といった意見のほか、そもそも「高齢者の入居は負担が大きくできれば避けたい」など、高齢者の入居自体に消極的な管理会社も見られました。
一方で、部屋を探す高齢者側の視点で見ると、実際に「賃貸の入居申込みで断られた経験がある」とした人は10.7%でした。「年齢そのもの」だけでなく、「連帯保証人が立てられない」といったシニア特有のハードルが障壁となっています。
さらに、高齢者が「現在の暮らしにおいて不安に感じていること」としては、「自分の健康悪化(病気・通院増加など)」(28.1%)、「生活費・家賃の負担増」(17.7%)、「将来、賃貸に住み続けられるか(更新・退去など)」(13.5%)といった不安が上位に挙がりました。
また、現在賃貸に住んでいる60歳以上の入居者のうち、48.6%が「今のアパート・マンションから住み替えたくない」と回答。その理由としては、「引っ越し費用が負担になる」(27.8%)や「荷物整理の大変さ」(23.6%)に加え、高齢になってからの部屋探しがいかに困難かを察し、現状維持を選ばざるを得ない心理も見え隠れします。
シニアが安心して歳を重ねられ、大家もリスクなく部屋を貸せる——そんな持続可能な賃貸市場のアップデートが、今まさに求められています。