車のエアコン(冷房・クーラー)の効きが悪くなると、エアコンガスの補充を考える人が多いのではないでしょうか。しかし、エアコンの不具合原因にはさまざまなパターンがあり、必ずしもエアコンガスを補充すれば改善されるわけではありません。そこで本記事では、エアコンガスの補充について現役整備士がわかりやすく解説します。
車のエアコンガスとは?
エアコンガスは車のエアコンシステムに充填されている専用の冷媒ガスのことです。エアコンガスの気化熱を利用することで冷房が機能しています。
▽エアコンガスの種類
エアコンガスは環境問題への影響等により、時代の変化に応じて使用されるガスが変化しています。
2020年前後がまさにそのガスが切り替わりつつあるタイミングで、市場では以下の2種類のガスが混在している状況です。
・HFC-134aまたはR-134a(従来のエアコンガス)
・HFO-1234yfまたはR-1234yf(ノンフロンの新しいガス)
それぞれ互換性はなく、134a以前は「R12」と呼ばれるガスが使用されていました。R12はオゾン層を破壊する成分が含まれていることから1996年に全廃されました。今後販売される新車はすべて1234yfへと切り替わっていきます。
エンジンルームまたはボンネット裏側に「充填されているエアコンガスの種類と量」が記載されたステッカーが貼り付けてあります。また、車両取扱説明書等にも同じ内容が記載されているので、これらを参考に使用している車のエアコンガスの種類を判断することができます。
▽エアコンガスの役割とエアコンが冷える仕組み
エアコンガスは冷房を効かせるために必要不可欠です。 エアコンシステム内でのエアコンガスの流れは以下のとおりです。
1.コンプレッサーで圧縮される(高温高圧の気体)
2.コンデンサで冷やされる(低温高圧の液体)
3.エキスパンションバルブで霧化される(低温低圧の気体)
4.エバポレータをエアコンガスが通過する
5.再びコンプレッサーに戻ってくる
エアコンガスがエキスパンションバルブで霧化されるときの気化熱により、エバポレータを通過するエアコンガスは冷やされます。
エバポレータは熱伝導性の高い素材が使われており、エバポレータ自体も全体が冷やされます。そのエバポレータに風を送ることで通過する風が冷やされ、冷房の風となって吹き出し口より出てくるのが、自動車のエアコンシステムの仕組みです。
車のエアコンガスが少ないとどんな症状が出る?
エアコンガスが規定量より少ないと、冷房の効きが弱くなり出てくる風がぬるくなります。さらにエアコンガスの量が少なくなると、エアコンがまったく効かなくなることもあります。
また、エアコンガス量の低下は冷房の効きに影響があるだけではなく、冬場の暖房使用時にも支障をきたします。これは、A/CボタンをONにすることで除湿機能も働いているためです。
エアコンガスが少なくなると除湿機能の低下によって、窓の曇りが取れにくい症状が発生します。
また、エアコンガスが少なくなるとエアコン使用時に「シュ〜」という音が車内で聞こえたり、独特の臭いがエアコンの吹き出し口から出てきたりするといった不具合が生じる場合があります。
【事前チェック】車のエアコンガスの補充が本当に必要か注意しよう
エアコンが効かないからと安易にエアコンガスを補充してはいけません。エアコンが効かなくなる理由は様々ですから、本当に補充が必要か事前にチェックしましょう。
実際にわたしも仕事をしていて「エアコンが効かないからエアコンガスを補充して欲しい」というご要望をいただくことがあります。
しかし、エアコンガスの量は正常で、ほかの原因でエアコンが効かなくなっていることも少なくありません。
基本的にエアコンガスの補充は、ガス漏れしていない限りは不要です。
一般的な車の使い方をしていれば、定期的にエアコンガス補充をしなければエアコンが効かなくなるというようなことはありません。
エアコンシステムは完全密閉ではないため、エアコンガスが少しずつ抜けていくからガスの補充が必要という意見も見られます。 しかし、ガスが漏れていない限り補充しなければエアコンが効かないほどになるのは、かなり年式が古くなった車です。
(例:わたしの家族の車で新車から20年/20万km以上経過していますが、エアコンのガス補充やリフレッシュは未実施ながら効きは良好)