親切心からの行為だったとしても、場合によっては恐怖に受け取られる場合もあるようです。ヒロ・コトブキさんの作品『おじいさんいっそのこと、受け取って引っ越しましょうや。』では、そんな親切心からの困惑が描かれています。同作はX(旧Twitter)に投稿されると、約5000いいねが寄せられました。
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日のこと、2人の家にドンドンと門戸を叩く音がします。こんな遅い時間に誰だろうと2人は困惑していると、扉から「ドゴーン!」「ビリビリ」と異様な音が鳴りはじめたのです。
2人は焦っていると、扉からバールの先のようなものが出てきます。おじいさんは意を決して、扉を開けることにしました。恐る恐る扉の先を覗いたところ、その先にいたのはなんと4体の地蔵でした。
実をいうと今日、おじいさんはものすごい吹雪で地蔵たちがかわいそうと思い、笠を被せてあげていたのでした。そのお礼として、地蔵たちはたくさんの小判や宝を持ってきたのです。
しかし一切しゃべらずたたずむ地蔵たちに、2人は「感謝より怖さのほうが勝っちゃうかも…」と感じます。また、夜の暗さや笠を被っている雰囲気が、より一層地蔵の不気味さをかもし出していたのでした。
そのうえ、扉を破壊しようとしたり、バールでこじ開けたりしてきたことから、地蔵たちのお礼を受け取るのも断るのも怖いと感じてしまいます。そこでおばあさんは「いっそのこと受け取って引っ越しましょうや」と提案し、2人は宝を持ったまま引っ越していくのでした。
読者からは「たしかに分かる気がする!」「引っ越しても地蔵が付いてきそう」など、さまざまな声があがっています。そこで、作者のヒロ・コトブキさんに話を聞きました。
なぜ地蔵たちはバールを使ってまで入ろうとしたのかは「わからない」
―同作を描いたきっかけについて教えてください
あるあるのシチュエーションを使って新しく大喜利をするのが(脳トレとしても)好きで、今回も『鶴の恩返し』や『笠地蔵』や『雪女』あたりの、『じいさんばあさんの家に誰かが訪ねてくるお話』を使わせてもらいました。
ショートの漫画を描く場合、あるあるなシチュエーションを利用すると、プロローグを省けて楽ちんというのもありますし、正しい流れがみんなの共通認識として植え付けられているので、笑いを生みやすいシステムが出来上がっていると思います。
―作中、地蔵たちはどのようなことを考えていたとご想像しますか?
僕の長い人生において、地蔵の気持ちや考えについて訊かれる日がくるとは思ってもみなかったので、僕はしばらく『地蔵は何を考えバールや丸太などを用いたのか』について、真剣に考えながら町を歩き、風呂に入り、また寝床につかなくてはなりませんでした。一晩明けて辿り着いた答えは『わからない』です。
ここで性急に答えを出すには、僕は僕の人生において、『地蔵の気持ちに立って物事を考えること』があまりにも少な過ぎました。まだまだだな、と思いました。
これからはもう少し地蔵の側に立って、あるいは地蔵に寄り添って、物事を見なくてはなと思いました。「僕はいいけど、地蔵はなんと言うかな?」といった具合に。
<ヒロ・コトブキさん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/kotobuki_hiroju