【漫画】『かさじぞう』のパロディ漫画に「これぞ人の世の真理」 笠がないお地蔵さんに放ったおじいさんの一言とは?

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「自分のをやれよ」

漫画家のすがぬまたつやさん(@sugaaanuma)が、昔話『かさじぞう』のパロディ漫画を投稿。その衝撃の内容に、たくさんの反響が集まっています。

『かさじぞう』は、日本人なら誰もが知っているほど有名なおとぎ話。

「とある村に貧しい老夫婦が暮らしていました。おじいさんは新年を迎えるためのお金を稼ぐため町に笠を売りに行きます。ところが、いっこうに笠は売れず、仕方なく町から帰っていると、お地蔵さんに出会いました。吹雪の中、寒そうな姿を哀れに思ったおじいさんは、売り物の笠をお地蔵さんにかぶせていきます。ところが、最後のお地蔵さんを残して笠がなくなってしまったので、おじいさんは自分の笠をかぶせてあげたのでした。家でその話を聞いたおばあさんも、おじいさんの善行を褒め、笠が売れなかったことを怒ったりはしませんでした。その日の夜、夫婦の家に米俵や餅などの食糧や財宝が届けられます。お地蔵さんたちがおじいさんにお礼をしに来てくれたのでした――」

本来はこんな心温まるお話です。仏教思想に基づいて、道徳心の大切さについて説いた話でもあります。

一方で、すがぬまたつやさんの漫画。「お地蔵さんにあげる笠が一つ足りなかった」というところまでは同じですが、ここから大きなルート分岐をしていきます。

なんとおじいさん、「まあでもこれはこれで、他のお地蔵様はよりあったかく感じるでしょう。一人だけ可哀想な奴がいると、アイツよりはマシだと思えるので」と手前勝手な理屈をつけ、最後のお地蔵さんにだけ笠をあげずに立ち去ってしまいます。

ひどい、ひどすぎる…。筆者、オチまで読んだ時、思わず「うおぉぉぉぉい!!」と叫びそうになってしまいました(笑)。タイトル通り、「自分のをやれよ!」とツッコミたくもなってしまいます。

しかし、「自分よりも劣っている人や不幸な人を見て、安心する」という心理は、誰にも備わっているもの。歴史を振り返っても、そのような立場に追いやられたり、身分制度のなかでそのような階級になってしまった人々は存在しますし、現代でも「自分より弱い人を見つけて叩く」という風潮は、ネット上や実社会でもみられることです。

また、おじいさんのしたことについても、「自分のものを差し出して(=自分を不幸にして)まで他者に尽くす」のは、果たして良い選択といえるのでしょうか。道徳的にはともかく、おじいさんの行為自体が必ずしも“悪”といえるのかどうかは、判断が難しいところです。

そう考えると、これはギャグ漫画ながら、人間の本質や人の世の真理を描いた深い作品ととらえることもでき、考えさせられますね。

この漫画が投稿された「X」(旧Twitter)のリプ欄にも、さまざまなコメントが寄せられました。

「悲しいけど真理ですね…」
「寒い…心が冷える…」
「自分より弱い対象が近くにいることで精神安定を図るタイプの発想!?」
「恩返しではなくお礼参りに来そうだ…」
「一人破壊して数を合わせるとかでなくてよかった」
「こういう思想の人って実際いるよね。こうして格差が生まれていく」
「あなたが脱げばあなたより暖かいと全員の地蔵が感じられますけどね...」
「お地蔵さんにはそうであってほしくないな」

醜い部分も大いに存在する人間の心。そのような悲しい真実から目を背けず、心を見つめ直すことで、少しでも良い人間であれるよう心掛けたいものです。

  ◇  ◇

他にも、すがぬまたつやさんは「X」やブログにて、独創性あふれる漫画を日々更新されています。

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