コンクリートの巨大な壁に沿うように設置された、1本の細い階段。その途中には、壁にしがみつくような人の姿が…。
正面から撮影されたこの1枚、構図の妙によって本来あるはずの奥行きが消え、まるで垂直に伸びる長いハシゴにぶら下がっているかのように見えます。まさに視覚のトリックのような強いインパクトを放つ写真が、いまXで大きな注目を集めています。
投稿したのは、廃墟探索やFPV撮影を行っているTakatan@廃墟FPVさん(@FriendTK)。撮影はいつも通り安全面に十分配慮して行われたものですが、あまりの光景に4.3万件を超える“いいね”が集まり、「凄いトリック」「間違った絵みたい(笑)」「夢に出てくるタイプの階段」「現代絵画だろこれ」「側面は傾斜があるのに……錯覚ポイントすぎる」といった、驚きと困惑の声が殺到しました。
この不思議な階段の正体は、岐阜県下呂市金山町にある、通称「最恐の階段」です。 正面から見るとほぼ垂直に見えますが、実際の角度は約40〜45度。1962年、地元の要望によって、アユ釣り用に設置されたものです。現在は人気の珍スポットとなっているほか、人気ホラーゲーム『サイレントヒル』シリーズの舞台のモデルになった場所としても知られています。
橋の上から見ると「非常に長い梯子」
投稿主さんが金山町を訪れたのは、廃業した銭湯の跡が公開見学できる場所があると知ったことがきっかけでした。
「金山町には、廃業した銭湯の跡が公開見学できる場所があるとのことで、撮影のために訪れました。そこで、町のガイドの方からいただいたガイドマップを見て、階段の存在を知ったんです」
実際に階段をのぼってみて、最も印象に残ったのは、見る角度によってまったく違う姿に見えることだったといいます。
「橋の上から正面を見ると、階段というより、まるで非常に長い梯子のように見えます。この角度は異様に見えるなと思いました。対して、反対岸の真横から見ると、かなり長そうであること以外は普通の階段に見えるんです」
投稿主さんによると、一番スリルを感じるのは、階段のてっぺんから下を見下ろす視点だそうです。
「階段はまっすぐ河原に降りているのではなく、傾斜のついた壁の角度に沿って斜めに造られていることもあり、違和感を受けるはずです。さらに、高さがかなりあり、階段の幅は人がすれ違うのが難しいと思われるほど狭く、極めつけは外側に手すりがないこと。そのため、高所恐怖症の方には使用をおすすめしません」
「最恐の階段」は、視覚的な面白さがある一方で、十分な注意が必要な場所であることも、投稿主さんは教えてくれました。
「金山町を含め、日本には歴史があり、価値のある、時にはおかしみのある建造物や場所が多く残っています。このような場所を、引き続きそのままの形で見られるようにするためにも、訪れる私たちは最大限安全に配慮し、学び、楽しめればいいなと考えています」
古い建造物を訪れるうえで大切な、安全への配慮
投稿主さんは普段、廃墟の写真や動画を撮影し、SNSで公開しています。今回のような町中にある少し変わった風景だけでなく、人目に触れにくい場所の魅力を写真や映像で伝える活動を続けているそうです。
「廃墟は基本的に、ガイドブックなどで大々的に取り上げられるような場所ではありません。普段、人の目には触れにくく、近づきにくい場所であり、一般的には怖い印象を持たれがちな嫌われものです。しかし、今では見られない建築方式であったり、自然と人工物の調和が生み出す諸行無常の美しい景色を見せてくれたりすることも多くあります。
そういった景色で得た感動を、私の写真や動画を見ていただいた皆さまと共有できたらいいなと思い、活動を続けています。今後は日本だけではなく、海外の廃墟にも足を伸ばしてみたいと考えています」
現実にあるのに、どこか現実離れして見える階段。その不思議な景色は、地域に残る建造物の面白さと、見る視点によって変わる風景の奥深さを伝えてくれる1枚となりました。