Aさん(40代女性)は通勤途中の公園で、弱った子猫を見つけます。その日は気になりつつも通り過ぎましたが、翌日もう一度様子を見に行くと、子猫はさらにぐったりとしていました。Aさんは子猫を放っておくことができず、自宅に連れて帰り保護するのでした。
ミルクを与え、動物病院にも連れていき、ようやく元気を取り戻してきた子猫。しかし後日、猫のことを知人に話していたら「勝手に連れて帰るのは問題では?」と言われ、もしかして知らず知らずのうちに罪になるようなことをしてしまったのではと考え、不安になります。
迷い犬や捨て猫のように見える動物を見つけた場合、保護しても問題はないのでしょうか。また、後から飼い主が現れた場合はどうなるのでしょうか。動物保護に関する法律の基本と、一般の人がとるべき対応についてAuthense法律事務所の新町佳史さんに話を聞きました。
Aさんのケースは直ちに違法とは言えないが…
ーAさんのようなケースに法律上の問題はありますか?
命の危険があるときに一時保護すること自体が直ちに違法とは言い切れません。ただし、迷い犬や猫は、法律上は「誰かの所有物」である可能性があり、その場合は「落とし物(遺失物)」として扱われます。
ーでは、迷い犬や猫を見つけた場合、どのような対応をするべきでしょうか。
まずは「遺失物」として警察へ届け出るのが基本です。そのうえで、保健所にも連絡しておくと、飼い主が探している場合に再会しやすくなるほか、後のトラブルも防ぐことができます。また、迷子かどうかの確認には、鑑札やマイクロチップ照会が役立ち、警察と自治体が連携する運用も示されています。
ただし、首輪がある・人に慣れている・自力で動けている猫は、外出中の飼い猫の可能性もあります。安易に保護すると、かえって飼い主の元に戻れなくなるおそれがあるため注意が必要です。状況を見極めたうえで、本当に保護が必要か判断しましょう。
ー保護した動物の元の飼い主が後から現れた場合、返さなければならないのでしょうか。
原則として返還する必要があります。犬や猫は法律上「物」として扱われ、所有権は元の飼い主にあるためです。
もっとも、警察への届け出など所定の手続きをおこない、公告から3カ月以内に飼い主が現れなかった場合には、拾得者が所有権を取得する可能性があります。ただし、この期間内に飼い主が判明した場合は、その時点で返還義務が生じます。保護した側が世話や治療をしていたとしても、所有権そのものが移るわけではありません。
ー保護した動物を里親に譲渡するケースも見られますが、法律上問題になる可能性はありますか。
飼い主がいる可能性がある段階での譲渡は、問題になるおそれがあります。元の飼い主がいるにもかかわらず、第三者に譲ってしまった場合、「他人の所有物を処分した」と評価される可能性があります。
一方で、警察や保健所への届け出を行い、一定期間が経過しても飼い主が見つからない場合には、新たな飼い主に譲渡されるケースもあります。自己判断で進めず、適切な手続きを行い所有関係を整理しながら進めましょう。
◆新町佳史(しんまち・よしふみ) 弁護士/Authense法律事務所
これまで企業法務にも携わりつつ、現在は相続、離婚、不倫慰謝料など幅広い分野にも対応。その累計相談件数は1万件を超える。依頼者1人ひとりと真摯に向き合い、言葉にならない思いや背景事情にも丁寧に耳を傾け、本音を引き出す対話を重視。スピーディーかつ友好的な解決へ導く粘り強い交渉力を強みとする。
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