週末の夜、友人との会食を終えた40代の男性会社員のAさんは、自転車で帰路につこうとしていました。ビールを3杯飲んだものの「車ではないし、少しの距離なら大丈夫だろう」という軽い気持ちでハンドルを握ったAさん。しかし、家まであと数百メートルというところでパトロール中の警察官に呼び止められたのです。
その場で行われた呼気検査の結果は、酒気帯び運転の基準値超えでした。後日、Aさんのもとに届いたのは刑事罰の通知だけでなく、あろうことか「自動車運転免許の停止」という信じがたい行政処分でした。
SNS上でも、Aさんのように「自転車で捕まっただけなのに、なぜ車の免許まで持っていかれるのか」と困惑する声が上がり始めています。点数制度がないはずの自転車での違反が、なぜか自動車の運転資格にまで波及し、最悪の場合は免許取り消しに至るというのです。
では自転車での違反が、なぜ車の免許を奪う根拠になるのでしょうか。元警察官で、現在は警察官志望者向けオンラインスクールを運営するやまよしさんに話を聞きました。
たとえ自転車でも自動車免許に関する行政処分が下される場合も
ー自転車での飲酒運転が原因で、自動車免許が停止・取消になるのは本当ですか?
本当です。まず、自転車は道路交通法上の「軽車両」に該当します。2024年11月の法改正により、自転車の酒気帯び運転(呼気0.15mg/l以上)には「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」という厳しい罰則が新設されました。
これに伴い、警察の取り締まりも厳格化されています。自転車での違反であっても、その者が自動車免許を持っている場合「この人物に自動車を運転させ続けてよいか」という適格性が審査されるのです。
たとえ事故を起こしていなくても、中ジョッキ3杯程度の飲酒で自転車に乗れば、自動車免許が停止・取消になることは十分あり得ます。
ー点数制度がないはずの自転車で、どうやって自動車免許の処分に結びつけるのでしょうか?
自転車の違反には点数制度がありません。そこで適用されるのが、道路交通法第103条1項8号に規定される「免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」という条文です。
結果として、点数制度関係なく最大180日間の免許停止、あるいは免許取消処分を下すことが法的に可能となっています。
ー実際に自転車の飲酒で車の免許が停止・取消になった事例はありますか?
あります。自転車の飲酒運転で事故を起こしたり、悪質な酒気帯び運転で摘発されたりしたケースでは、警察が詳細な調査を行い、免許保有者に対して免許停止などの処分を行ってきました。
「自転車なら捕まっても赤切符(刑事罰)だけで済む」というのは大きな誤解です。ハンドルを握るすべての場面において、飲酒は「免許を失うリスク」に直結していると認識してください。自転車であっても「絶対に運転しない(押して歩くのはOK)」を徹底しましょう。
◆元警察官やまよし 元警察官で、現職時代は主に交番や刑事として勤務。
現在は、その経験を活かし警察官志望者向け教室「やまよし教場オンラインスクール」(面接対策など)を運営。7年間で5,000人以上をサポートし(2026年1月現在)、全都道府県警察へ合格者を輩出している。主にYouTubeなどでの情報発信のほか、メディア出演や取材協力などもおこなっている。
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