東京・町田で43年間、心のこもった手作り弁当を販売するキッチンハウスたんぽぽ(@tanpopobento)。店主である母親と共にお店を切り盛りする娘の麻衣子さんには、愛しくてたまらない愛猫がいる。5年かけてようやく保護できた、しーちゃんだ。
しーちゃんは現在、20歳のご長寿猫。麻衣子さんは「まだまだお世話させてね」と伝え、愛を注いでいる。
野良の母猫が連れてきてくれた子猫を保護したい!
2006年、お店の裏に野良の母猫が来るようになった。今度、子どもたちのお顔を見せてね。そう話しかけると、母猫は翌日、3匹の子猫を連れてきた。
1匹は父猫に連れられて姿を消し、もう1匹は発情期を迎えて行方不明に。麻衣子さんは、残ったしーちゃんの保護に奮闘。慎重派のしーちゃんを保護できるまでには、5年近くかかった。
「保護1カ月前には背中から腕にかけて裂傷があったので、ご飯に薬を混ぜていました。治ったと思ったら、次はまぶたの上に怪我を負って…。保護団体さんに相談し、捕獲器を借りて保護しました」
まずは避妊手術をしないと…。そう思い、動物病院へ行くと、驚き事実が。女の子だと思っていたしーちゃんは、去勢手術が済んだ男の子だった。
「後で保護団体さんに聞き、しーちゃんがよく行っていた公園で猫の一斉TNR(※飼い主がいない猫を保護し、避妊・去勢手術を行って元の場所にリリースする活動)が行われていたことを知りました」
全く触れなかった成猫が心を開くまで
野良猫時代、しーちゃんは全く触らせてくれなかった。保護後のケージ生活では2カ月近く、毎日夜鳴き。保護したことで苦しめているのでは…と、不安になった。
だが、猫じゃらしで遊ぶようになると、徐々に変化が。棒の部分で頭を撫でることができるなど、距離が近づいた。
「ある日、ケージを開けてもいいかなと思えたんです。そこで、扉を開けたら膝に頭をスリスリしてくれて。嬉しくて泣きました」
その後は1年以上かけて、抱っこができるように。抱かれる喜びを知ったしーちゃんは、抱っこ時、腕に手を回してくれることもある。
20歳を迎えるまでには、2つの大きな病気が判明した。17歳の頃に発症したのは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される「甲状腺機能亢進症」。嘔吐の回数が増え、痩せてきたことから病院に相談。病名が判明し、服薬が始まった。
「診断を機に、ハイシニア用のフードに切り替え、サプリメントを試すようになりました」
この時期には、高さがあることで入りにくさを感じないように猫用トイレの見直しも行ったそうだ。
高血圧症から愛猫が失明して…
新たな病気が判明したのは、18歳の時。ギャーギャー鳴く姿に違和感を覚えるようになった頃、視点が定まっていないことに気づく。動物病院に駆け込むと、高血圧症による失明と診断された。
診断後、自宅には見守りカメラを設置。遠隔で様子を確認できるようにした。
「この頃から椅子やベッドから転げ落ちたり、足を踏み外したりすることが多くなったので、足腰の痛みに効くサプリを与え始めました」
目が見えなくなってから猫用トイレは、しーちゃんが普段過ごす2階に設置。ひと部屋で生活が完結するように配慮したが、初めの頃、しーちゃんは頑張って1階まで降りていき、迷子になることもあったそうだ。
「慣れてくれるまでは大変でしたが、何度も『ここにあるよ』と教えているうちに理解してくれました」
ハイシニアの愛猫にしている“暮らしの配慮”
愛猫がハイシニアになると、日常の中で必要なケアは増える。しーちゃんの場合は、ウエットフードの固形部分を残すようになったため、人間の離乳食用ミキサーで液状にしてからあげるようになった。
「ドライフードは小粒の薄いもの。大粒タイプをあげる時は、カットしています。ただ、ライフードは食べてくれない時もあるし、ふやかすと嫌いみたい。好みがコロコロ変わるので、食に関しては試行錯誤の日々です」
最近はトイレ後、お尻に猫砂がついているため、赤ちゃん用ウエットティッシュでお尻周りを拭き、ケアしている。
毛づくろいや爪とぎを自発的にしなくなったことから、毎日のブラッシングや爪のケアも欠かせない。
「甲状腺機能亢進症は症状が進むと体重が減少するので、体重を測ることも意識しています」
“ありのままの自分”を受け入れて生きる愛猫に励まされた
失明する前に、高血圧に気づけていたら…。麻衣子さんは一時期、そんな罪悪感に襲われた。そんな時に心の支えとなってくれるのは、変わらず愛情を向けてくれるしーちゃんの姿。
「失明後も、いつもと同じように『おかえり!』『抱っこ!』『お尻トントンして』と行動が何も変わらなかった。全てを受け入れて前に進む姿に励まされました」
麻衣子さんにとって、しーちゃんは“愛しいのかたまり”なのだ。
なお、麻衣子さんは自分たちの日常が、成猫の保護の促進に繋がってほしいとも話す。
「長年、外にいた大人の猫でもこんなに慣れてくれ、適切なケアをすれば長生きしてくれることを知ってほしいです」
自分に起きたことをありのまま受けいれ、今を全力で生きるしーちゃん。その姿から私たち人間は命を生き抜くことの尊さを学ぶ。