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28歳女性、障がいを隠して始めたマッチングアプリ プロフ写真に車椅子を写して気付いたこと「“いいね”の数は減ったけど…」【社会福祉士が解説】

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美咲さん(仮名・28歳)は、10代のころに交通事故で下半身麻痺となった車椅子ユーザーです。昨年、友人に勧められてマッチングアプリを始めた彼女が最初に悩んだのは、プロフィール欄の「障がいの告知」でした。「書けば“いいね”が激減するかもと思って、最初は書けなかった」と彼女は振り返ります。しかし、会う段階になって打ち明けると相手が戸惑う場面が続き、「最初から書いたほうが、お互いにとって誠実だと気づいた」といいます。

その後、写真に車椅子を写し込んだプロフィールに変えたところ、"いいね"の数は減ったものの、メッセージを送ってくる相手は以前より誠実で、話が深まりやすくなったと話してくれました。初デートでは段差のある居酒屋を予約されて入店できないというハプニングもありましたが、その経験をもとに「バリアフリーのカフェやミュージアムをデート場所に提案するようになった」と言い、今では半年以上交際を続けるパートナーができたそうです。

美咲さんの体験から、障がいがある人がマッチングアプリで恋愛するときのリアルな課題と、その乗り越え方を見ていきます。合わせて、障がいがある人の恋愛・結婚に関するデータ、プロフィール記載のポイント、カミングアウトのタイミング、そしてバリアフリーデートスポットの選び方まで、当事者にも一般読者にも役立つ情報を紹介します。

障がいがある人の恋愛・結婚、データが示すリアル

障がいがある人の結婚に関する現状は、数字に明確に表れています。株式会社ゼネラルパートナーズ・障がい者総合研究所が行った「障がい者の結婚に関する意識調査」(2017年、有効回答数478名)によると、障がいがある人の既婚率はわずか26%にとどまります。これは、国勢調査(2020年)が示す一般成人の有配偶率55.6%と大きな開きがあります。

一方で、前述の「障がい者の結婚に関する意識調査」では未婚者の66%が「いずれ結婚したい」と回答しており、障がいがある未婚者の一定割合が結婚への意向を持っていることを示す結果です。

このように、結婚への意向を持つ人が存在する一方で、実際の既婚率との間には開きがみられることが、調査結果から確認できます。さらに注目すべきは、既婚の障がいがある人の多くが「障がいは結婚の支障にならなかった」と感じている一方で、未婚者の間では「障がいが結婚の支障になる」と考える人も少なくない点です。この傾向は、ゼネラルパートナーズの調査要約などで紹介されており、結婚前の不安が実態より大きく膨らんでいる可能性を示しています。「まずは一歩踏み出すことが大切」という当事者の声を裏付けています。

プロフィール記載の「正解」は人それぞれ

マッチングアプリにおけるプロフィールの書き方は、当事者の間で意見が分かれます。主なアプローチは大きく3つです。

▽1.最初から開示する

この方法は、障がいに理解のある相手を最初から絞り込める点がメリットです。美咲さんのように車椅子を写真に写したり、本文中に一言添えるだけでも、誠実なやりとりが生まれやすくなるといいます。

▽2.メッセージが続いてから伝える

次にこの方法は、まず人柄を知ってもらってから打ち明けるため、先入観なく自分を見てもらえます。ただし、会う直前や会ってからの告知は相手を戸惑わせる場合もあるため、「会う約束をする前」を目安にすることが多いようです。

▽3.障がいを持つ人向けアプリを活用する

また近年では、障がいがある人や理解のある人が登録できるマッチングアプリも登場しています。公的証明書による本人確認を必須とし、シークレットモードでプライバシーにも配慮するなど障がいを持つ人が主役の恋活・婚活に特化しています。

デートで失敗しないために——バリアフリー視点の場所選び

美咲さんが経験した「入店できない居酒屋」のエピソードは、珍しくありません。車椅子ユーザーにとって、デート場所の選定は恋愛の大きなテーマです。次のような場所は、バリアフリーへの配慮が比較的整っており、デートに向いています。

1.多くの美術館・博物館にはスロープ・エレベーター完備で、広い通路が設置されています。
2.水族館にはフラットな動線が多く、ゆっくり楽しめるところも多くあります。
3.植物園・公園には、舗装された広い園路が多くあります。
4.テーマパークによっては車椅子対応のサービスも整備されています。
5.シネコンには車椅子スペースやバリアフリートイレが整備されています。
6.バリアフリー対応の温泉施設・スパなどは事前確認が前提ですが、ゆっくり過ごせるところが多いようです。
7.屋内型アクティビティ(陶芸体験、料理教室など)は移動が少なく済み、会話も弾むかもしれません。
8.大型ショッピングモールではエレベーター・多目的トイレが充実し、食事・散策を一度に楽しめます。
9.バリアフリー対応カフェ・レストランは予約時に車椅子での来店を伝えると、事前確認してもらえることもあるようです。
10.オンラインデート(初回限定)は移動の不安なく人柄を伝えられて、信頼関係を築きやすいかもしれません。

事前に「車椅子で行けるか」を確認する一言が、互いの気遣いのきっかけになります。相手がその確認をいとわない姿勢を見せてくれるかどうかも、相性を判断するひとつの基準になるでしょう。

カミングアウトのタイミングと、大切な心構え

告知のタイミングに「絶対の正解」はありませんが、多くの当事者の体験から共通点が見えてきます。美咲さんのように「会う前の段階で伝えておくこと」で、相手にも心の準備の時間が生まれると同時に、不必要なすれ違いや精神的な負担を軽減できるという声が多くあります。

また、カミングアウトの際は「大事な告白」として重く切り出すよりも、日常会話の延長として自然に話す方が、相手も受け取りやすいといわれています。「移動はいつも車椅子なんだけど、段差のないお店だと助かる」というように、次のデートの話題と絡めて伝える方法は実用的です。

大切なのは、障がいを「隠さなければならないもの」ではなく、「自分のことを知ってもらう情報のひとつ」として捉え直すことです。障がいがある人が恋愛・結婚を望むことは、何も特別なことではありません。66%の未婚の障がいを持つ人が結婚を望んでいるというデータが示すように、誰かと一緒に生きたいという願いは、あらゆる人に共通の感情です。

社会のバリアフリー化とともに、人々の意識も少しずつ変わりつつあります。美咲さんのように、失敗を重ねながら自分らしい恋愛の形を見つけていく当事者が増えることで、障がいがある人の恋愛がより「当たり前のこと」として受け入れられる社会になっていくのではないでしょうか。

【出典】株式会社ゼネラルパートナーズ「障がい者の結婚に関する意識調査」(2017年)/「障がい当事者に聞いた恋愛意識調査」(2018年)/総務省「令和2年(2020年)国勢調査」

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)
社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士、身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

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