「彼氏が一途に私を愛してくれていることは、頭では理解できるのに、彼氏を心の底から信用できない自分がいて、すごく苦しいです…。」
そう語るのは、都内に住む30代女性の堀内みなみさん(仮名)です。
堀内さんは、幼い頃からシングルマザーである母と二人で暮らしてきましたが、母からの暴力や暴言に耐えかねて、大学進学を機に実家を出ました。入学金や学費は、数少ない親族が援助してくれた分に加えて、自分でもアルバイトで稼いで費用を捻出し、なんとか卒業。
社会人になり、そろそろ家庭をもつことを考え始めたタイミングで、現在の彼氏と出会ったといいます。
「今の彼氏とは何も問題なくお付き合いできているはずなのに、彼のことをどこか信頼しきれない自分がいるんです。過去の恋愛でも同じような失敗をしていて、自分に自信がなくなっていくんです…。」
堀内さんは、今回の彼氏が初めての出会いではなく、大学時代から20代半ばまで、何度か恋愛を重ねていました。しかし、どれも苦い記憶ばかり。堀内さんはそのような経験から、彼氏を信用したいのに信用できない状態に陥ったといいます。
これはあくまで一例であり、お一人おひとりのご経験は異なりますが、実は堀内さんのように、「毒親」に育てられて大きくなった大人が恋愛に苦労することは珍しいことではありません。
なぜ毒親育ちは大人の恋愛で苦労することが多いのでしょうか?よくある失敗の事例から、パートナーと健全な関係を構築する方法までをご紹介します。
毒親育ちが直面しやすい恋愛のトラブル
毒親育ちにある恋愛における失敗は、大きく分けて3つあるといいます。その3つの失敗とは、一体何でしょうか。
▽①相手との距離感に悩みやすい
幼少期に安心できる人間関係を築きにくかった場合、大人になってからも、相手にどこまで頼ってよいのか、どこまで踏み込んでよいのかが分かりにくくなることがあります。急に距離を詰めすぎたり、逆に必要以上に壁をつくってしまったりして、恋愛関係が不安定になることもあります。
▽②相手の愛情を素直に受け取りにくい
傷つく経験を重ねると、「どうせ見捨てられる」「本当に愛されるはずがない」と感じやすくなることがあります。その不安から、相手の気持ちを確かめようとして何度も確認したり、わざと突き放すような態度を取ったりしてしまい、結果として関係がこじれてしまうことがあります。
▽③捨てられる不安が強くなりやすい
子どもの頃に安心して頼れる経験が少ないと、大人になってからも「嫌われたらどうしよう」「見捨てられたくない」という不安が強く残ることがあります。そのため、相手の顔色を過剰にうかがったり、関係にしがみついてしまったりして、自分も相手も苦しくなる場合があります。
その結果、大きくなってからも他人の顔色を伺い、見捨てられ不安による過度な執着をしてしまいます。
その結果、パートナーが重荷に感じてしまい、別れを迎えることは珍しくありません。
パートナーとの健全な関係構築を目指すためには?
こういった環境で育った大人は、健全な恋愛関係構築ができないわけではないのです。パートナーと健全な関係構築に必要なこととは、一体何でしょうか?3つのポイントをご紹介します。
▽①自分の反応のクセに気づく
相手を疑ってしまう、褒め言葉を受け取れない、不安になると何度も確認したくなる――そんな反応が出たときは、「自分が悪い」と責めるのではなく、過去の経験が影響しているかもしれないと一度立ち止まってみましょう。自分のパターンに気づくことが、関係を変える第一歩になります。
▽②一人で抱え込まず、言葉にしてみる
信頼できる相手であれば、「私はこういうときに不安になりやすい」と少しずつ共有していくことも大切です。うまく伝えられないときは、ノートやメモに書き出して気持ちを整理する方法もあります。
▽③必要なら専門家に相談する
過去の家庭環境の影響が強く、恋愛だけでなく日常生活にも支障が出ている場合は、カウンセラーや心療内科、精神科などの専門家に相談することも選択肢です。誰かと安定した関係を築くためには、まず自分の傷つきに気づき、無理のない形でケアしていくことが大切です。
自分を責めすぎないで
堀内さんは、自身の現状を受け入れるために、幼い頃の自分の気持ちを紙に書き出すことが時々あると言います。
書き出すことによって、現在の彼氏さんともお互いのご家族の話をするように、結婚についても話題が出るようになったようです。
「私が心の殻に閉じこもっていただけで、彼氏は、私のペースに合わせて心を開くことを待ってくれていたことに、ようやく気づきました」
そのように話す堀内さんの表情は、照れくさそうでもありましたが、喜びの感情も滲み出ていたように感じました。
恋愛がうまくいかないとき、それをすべて自分の性格のせいにしなくてよい場合があります。過去の経験が影を落としていることに気づき、自分を責めすぎず、必要に応じて周囲や専門家の力を借りながら関係を築いていくことが大切です。
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)
社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。