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発語のない8歳息子が描いた似顔絵に「ママ」の文字 「私のこと、そう呼んでくれていたんだね」母が初めて知った思い、その日から文字で会話が始まった

五ヶ瀬 あお 五ヶ瀬 あお

「この度、なんと!わたしのことを“ママ”と呼んでくれていたことを、彼がくれた絵で知ることができました」

 障がいにより言葉を話せない8歳の男の子が描いた、両親の似顔絵。絵の横には、「ママ」「パパ」と文字が添えられていました。そして、その日から、男の子とママとの間で、文字によるコミュニケーションが始まったといいます。男の子の両親に話を聞きました。

 3歳のときに知的障害を伴う自閉スペクトラム症と診断された、長男くん。特別支援学校に通っています。小さい頃から大好きだったというお絵描きで、初めて自主的に描いたという両親の似顔絵は、ママはピンク、パパは水色の帽子を被っていて、明確にはわからないものの笑っているような表情に見えます。

 以下、写真に添えられたママのコメントです。

『小3息子は、言葉を話せない。だからわたしはこの8年半、我が子である彼が、わたしのことをどういう人だと認識しているのかすら、わからなかった。
母ちゃんなのか、おふくろなのか、なんとなく家にいつもいる人なのか…。
ですが、この度なんと!わたしのことを“ママ”と頭の中で呼んでくれていたことを、彼がくれたこの写真の絵で知ることができました。
ママか〜〜!ママだと思ってたのか〜〜!!!
⁡てっきり母ちゃんだと思ってずっと一人称“母ちゃん”で話しかけてたよ(笑)(中略)
このまま一生言葉は話さないかもしれないし、それでもいいと思ってるけど、これからもっと、彼の気持ちを知れる術が広がったらいいなぁ』

 この日から、何か伝えたいことがある時に、『ラーメン』『かばん』などと文字で教えてくれるようになったという長男くん。思いがけない文字でのコミュニケーションの始まりに驚いたという両親に、話を聞きました。長男くん、5歳の長女さん、1歳の次女さんの3人のお子さんがいます。

ーー現在の長男くんとのコミュニケーションについて教えてください。

「基本は、私の肩を叩いて呼ぶ、物を持ってくる、指差すなどがメインのコミュニケーションです。ジェスチャーは促せば真似できますが、自主的にできるのは“うなずき”くらいです。そして、欲しいものがあれば、名前を文字で書いて教えてくれたり、家族5人の似顔絵のような絵の上に、それぞれの名前を書いてくれたりもするようになりました。

また最近、印象的な出来事がありました。学校を休んで旅行に行った日のこと、夕方頃に急に長男がしくしく泣きながら不安定になりました。お菓子やおもちゃが欲しいのかなと思って、紙とペンを渡し『何が欲しいの?』と聞いたら、学校のお友達2人の名前を大きく書いたんです!

『◯◯くんと◯◯ちゃんに会いたいの?』と聞いたら笑顔に変わり、うれしそうに『うん』とうなずきました。気持ちが伝わった!と長男もうれしかったかなと感じ取れたのと、長男がお友達を大切に思っているんだとわかったのもあわせて、印象的な出来事でした」

周囲との関係性、得意なこと、現在の困りごとについて

ーー言葉は話せずとも、周囲やお友達との関係性を築けているのですね…!

「これは親バカですが…、長男の周りにはいつも素敵な方が集まってくるな、と昔からよく思っています。特性によりご迷惑をたくさんおかけしていると思うのですが、今まで通ってきた療育や学校、放課後等デイサービスなど、どこに行っても気にかけてくれるお友達や、我が子のように可愛がってくださる、熱心に関わってくださる先生方に恵まれるなぁと感じています。

特にお友達に関しては、長男は発語もないし、一緒に遊ぶことも得意ではないのに、それでもこの子のことを好きだと言ってくれるお友達がいることは奇跡のようにありがたいことだと思っています」

ーー長男くんの得意なこと、好きなことは?

「お絵描きは小さい頃から大好きです。クレヨン、絵の具、色えんぴつ、チョーク…なんでも好きです。カラフルで力強いタッチの絵が特徴です。クレヨンはあっという間に1本なくなりますし、紙も多い時は2〜3日で100枚なくなります」

ーー発達特性による現在の困りごとはありますか?

「本当にたくさんありますが…、危険なことがわからず急に走り出したり、汚い物や人の持ち物を触ってしまったり、突然大きな声が出てしまったりするので、外出時はとても気をつかいます。特に下の子たちがまだ幼いので、家族そろってのお出かけは、いつもとても神経と体力をつかいます。

下の子たちに我慢してもらう場面も多いのですが、『長男がいるから〇〇に行けない、できない』という思いを下の子たちにできる限りしてほしくなく、少しでもそうならないように、私と夫で二手にわかれて、子どもたちを遊びに連れて行ったりしています。でも、本心では、もっと家族揃って思い出を作れたらいいのにな、と思っています」

“長男も、下の子たちも、自分の人生を幸せに生きてほしい” 育児で大切にしていること

ーー長男くんを含め、3人のお子さんの育児で大切にしていることを教えてください。

「夫婦の思いとして、“長男の障がいのことを隠して生活したくない”ということがあります。障がいがあることも含めて長男ですし、何も悪いことはしていないので、堂々と楽しく生活したいと思っています。

ですが、それはあくまでも私たち親の気持ちであり、きょうだい児である下の子たちは違うかもしれないというのは常に頭に置いています。

もしも彼女たちが思春期を迎えたときや、それ以前でも、“障がいのある兄”の存在が周りからどう見えるのか、気になる日がきっとくると思うのです。隠したいと言うかもしれません。

長男を大事に思う気持ちと同じくらい、長女、次女の気持ちも決して蔑ろにしたくない。家族だから、兄妹だからといって、長男の障がいを背負う必要はない。それは、親の役目だということを少しずつ伝えていきたいです。

親ならみんな願うことかと思いますが、長男も長女も次女も、ありのままを受け入れてくれる世界でのびのびと自分の人生を幸せに生きていってほしい。

そのために、今からしてあげられることはなんだろう、どう寄り添ってあげたらいいんだろうと日々模索しています」

『同じような境遇のご家族のお力に少しでもなるのであれば』と匿名で取材にご協力いただいたYOUさん。長男くん、そして2人の妹さんたちーー、YOUさん家族の穏やかな日常は、これからも続いていきます。

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