「鬱(うつ)になると、何もできなくなる。食事も、風呂も、着替えも…」
そんな書き出しの投稿が、SNSで静かな広がりを見せている。
投稿したのは、不登校や心の不調と向き合う母親のねこのすけさん(@monaou0513)。実家に戻ってきた娘が「お風呂には入れるけど、髪は洗えない」と話したため、母である自分が髪を洗っている…その日常を、率直な言葉でつづった。
「甘やかしすぎ? いいねん、娘は弱って帰ってきたんやから」
「“リンスつけすぎ”“そお?”なんて会話も嬉しい」
投稿のコメント欄には、同じような経験を持つ親や当事者から、共感や体験談が次々と寄せられた。
「帰ってもいい?」その一言の重み
ねこのすけさんの娘さんは、高校2年生。中学時代から不登校を経験し、精神的な不調を抱えてきた。現在は、学校に通うために家族と離れて暮らしている。
「いつもは実家に帰りたがらない子なんです。学校のこともあって、普段は一人で過ごしているのに、それなのに自分から“帰ってもいい?”って言ってきて。珍しいな、とは思いました」
娘が帰ってくること自体は、母として素直にうれしかった。だから「是非是非」と迎え入れたという。
「あとから考えると、それほどまでに弱っていて、限界だったんだなと、今なら分かります」
「できない」ことを、責めない
娘が口にした「髪は洗えない」という言葉。それを聞いたとき、ねこのすけさんは迷いながらも、手を差し伸べた。日々の関わりで大切にしているのは、「柔軟な視点」だという。
「どうしても、自分の物差しで考えてしまいがちなんですよね。でも、それは誰でも同じ。だからこそ、なるべく一つの正解に縛られないようにしています」
毎日できるわけではない。投稿の後日談では「今日はお風呂に入れなかった」とも明かしている。それでも「明日は入る」と言えたこと、冗談に笑えたことを「OK」と受け止める。
「焦らず、ゆっくり」
その言葉を、ねこのすけさん自身もまた、周囲から学んでいる。
「良いお母さん」ではない、という正直さ
投稿後、「優しいお母さん」「理想の対応」といった声も多く届いた。しかし、ねこのすけさんはそうした評価に、正直な思いを重ねる。
「全然、できた親じゃないんです。失敗も後悔も、山ほどあります」
それでも、温かい言葉に救われたという。
「未熟だからこそ、皆さんのポストが身に沁みました。ありがたいです」
また、うつ病の経験者や、現在闘っている人、その家族から寄せられた“リアルな声”は、娘を理解するうえで大きな支えになった。
「娘のことを、より解像度高く見られるようになった気がします」
髪を乾かす、その時間がくれたもの
リプライには、似た経験が数多く寄せられた。
・シャワーは浴びられるけど、髪は親が乾かしている
・大人になってから、母に髪を乾かしてもらい、初めて甘えられた
・待つことで、子どもが少しずつ前を向いた
「甘やかす」ことになるのか、「支え」なのか。その線引きに正解はない。
ただ、今は“生きる力を取り戻す途中”なのだと理解すること。そして、できない日があっても「それでもいい」と言える場所があること。ねこのすけさんの投稿は、そんな当たり前で、でも見失いがちな大切なことを、多くの人に思い出させている。