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ドラマ「Dr.コトー診療所」のロケ地・与那国島 咳や発熱で隔離された筆者 休診返上の若い医師に救われた

沖縄・与那国島滞在記【2】

岩崎 正範 岩崎 正範

プロ野球キャンプで活気に沸く沖縄、本島から南西へ509キロ、台湾までわずか111キロの距離に位置する国境の島・与那国島は、全く別の空気を纏っていた 。プロ野球取材一筋の「アラ還」記者が初上陸したその島は、南国のイメージを覆す烈風と、神秘的な神事「マチリ」が息づく場所だった。地図の端っこに生きる人々の「ホンネ」と「平和への願い」を綴る。(全4回の2回目)

ドラマ「Dr.コトー診療所」のロケ地

よりによって日本最西端、国境の島で発熱ダウンとはツイてない。くしくも与那国島といえば、あの人気ドラマ『Dr.コトー診療所』のロケ地として有名。離島での過酷な医療状況を舞台に、様々な人間模様が描かれた名作で、今も比川の集落には当時の建物が残っており、観光スポットとなっている。

入場料を払えば「診察券」が出てくるという芸の細かさで、他にも…などと言っている場合ではない。咳、発熱続きで筆者は完全にグロッキーで肝心の診療所はもっか休診中…。すでに宿では特別に夕食を部屋の前に持ってきてもらうなど、隔離状態が続いている。マジでDr.コトーはおらんのか…とゼエゼエしていたら与那国町診療所のビラを発見。よくよく見ると小さめでこう書いてあった。

「重要・緊急時には診療時間に問わず119番へ通報!」。発熱が緊急通報するほどの状況かを必死に頭をめぐらせたが、もはや〝旅は恥の欠き捨て〟の領域に突入。呆れられ覚悟で緊急電話をかけ、一応、恥ずかしそうに症状を説明すると「了解しました。今から医師を診療所に向かわせますので何分後ぐらいに来れますか」とホンマかいな、の返答が…。

「実はインフルが大流行してます」と若い医師

診察では鼻に綿棒を入れられ、結果は風邪どころか、インフルエンザA型と診断。島では例年、医師確保の問題が浮上する中、休診返上で筆者の面倒をみてくれた若い〝Dr.コトーさん〟は「小さい島ですから実はインフルが大流行してます。マチリもありましたから」といいつつ、「ここでは風邪でもきついなら緊急電話してもらって全然いいんですよ。今日は5件ありましたし」と笑顔で話してくれた。電話してよかった…。

処方された薬でその後は症状も快方に向かったが、咳がまだしつこい。そんな調子なのでオバアがやっている人気のそば屋では、会話もマスク越しに「そば並…」と最短。徹底した感染予防を自ら課した。感染させてしまったら大変なことになる。

元気を取り戻すと、ようやく島の日常が見えてきた。天然記念物の与那国馬が放牧される牧場など、大自然豊かな島内の名所をバイクでブンブン駆け回った。ナデナデして気に入った馬には勝手に「チン太」(アソコが大きかったから)と名付け、翌日も会いに行ったが、どの馬だったか分からずじまい。まあ、そんなことはいい。まだ重要なテーマが残っている。

インビ岳にそびえる巨大監視レーダー

バイクなら1時間で一周が可能の与那国島。インビ岳と呼ばれる島南部の山上には巨大な監視レーダー施設が6基もそびえ立つ。これらは2016年に開設された陸上自衛隊・与那国駐屯地の沿岸監視隊が周辺海域の艦艇や周辺空域の航空機を24時間監視するための設備だという。

近くから見上げるとかなりの威圧感。国境の島である与那国島が日本の国家安全保障の政策上、重要な位置にあることがあらためてうかがえる。当然、自衛隊員とその家族も多く移り住み、過疎に悩む島の活性化にも貢献。莫大な防衛費で基地の施設は年を追うごとに拡充されているとか。

筆者は単なるプロ野球担当取材記者で、軍といえば巨人しか知らないほど安全保障のジャンルには疎いが、ここに来ればいや応なしにピリピリムードを痛感した。ある日、移住者の女性にこの手の話を軽くふったら、ぴしゃりと苦言を呈された。

「どこに自衛隊の人が聞いてるかわからないから、あまり詮索しない方がいい。町民もいろんな意見を持っているから」

島の内情&ホンネは?

素朴な疑問が沸き出てくる。島外からやってきた自衛隊員とその家族、町民との共生は…。尊敬するノンフィクション作家・沢木耕太郎さんのような濃厚な文章は…まったく書けないが、これでも筆者は阪神、巨人で4度の優勝記事を執筆、メジャーで松井秀喜さんを追い続けたブンヤの端くれだ(関係ないか)。専門外とはいえ、今回島の内情&ホンネを明かしてくれる複数の「インテリジェンス(情報屋)」をゲットしていた。

前出したようにカラスもいない人口1700人の島。同じ集落で親戚も多く人間関係は濃厚だ。例えば「Aさんは××、Bは××で××してる」など誰も彼もが互いの最新情報を知るレベルとあれば、そこは移住者も含めて絶対匿名が条件だ。

陸上自衛隊・与那国駐屯地では今後、全国では初となる対空電子戦隊の配備、施設等の増強に、「台湾有事」の〝Xデー〟を想定した町民の九州・佐賀県の集団避難計画などが報道された。どれもこれもタダならぬ話だが、そんな駐屯地の是非を巡って多くの町民が「賛成、反対の2つの意見があるのは当然のこと」と口を揃えている。

70代のインテリジェンスは「基地を強引に増強させていく国のやり方には不満だが、自衛隊が島に来て町の税収も増え、財政的には良かったと思っている。自衛隊員は駐屯地の中だけでなく、各集落にその家族も移住しており、島の人手不足の中、村の行事、海岸のごみ拾いのボランティアにも参加し、溶け込んでいる」と指摘。一方で「都会からやってきた自衛隊員の家族の子どもが引きこもりで悩んでいたところ、自然豊かな島の子どもたちと出会い、治ったケースもある」と微笑ましいエピソードも教えてくれた。

さらには別の若手インテリジェンスは偽らざる思いを明かしてくれた。

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