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「どちらを伝えるべきか」「どこまで伝えるべきか」 LGBTQ+と発達障害を併せ持つ26歳男性、面接のたびに迷い続けた“二重マイノリティ”の就活

もくもくライターズ もくもくライターズ

「面接で、どちらを伝えるべきか毎回迷いました」

トランスジェンダー男性(出生時に割り当てられた性別は「女性」でありながら、性自認が「男性」である人)でADHDのある山田さん(仮名・26歳)は、就職活動中の苦悩をそう振り返ります。発達障害への配慮を求めれば性自認(自分の性別をどのように認識し、どのように感じているか)について聞かれ、性自認について説明すれば発達障害への理解が後回しにされる。面接官の反応を見ながら、どこまで自分をオープンにするか判断を迫られる日々でした。結局、両方を理解してくれる企業に出会うまでに、30社以上の選考を受けたといいます。

二重マイノリティとは

二重マイノリティ(ダブルマイノリティ)とは、2つのマイノリティ属性を併せ持つ状態を指します。たとえば、障害を抱えながら経済的に困窮している人、慢性疾患を抱えつつ精神的な困難を経験している人、社会的に孤立している状況で特定の支援が必要な人などがいます。LGBTQ+と発達障害の組み合わせは、その一例です。

しかしながら、制度や相談窓口はLGBTQ+と発達障害で分かれていることが多く、複合的な困難を抱える当事者への支援は現状では十分とはいえません。認定NPO法人ReBitの2021年調査では、精神・発達障害があるLGBTQ+の92%が求職活動で困難を経験していることが明らかになっています。

就活で直面する困難

二重マイノリティの当事者が就職活動で直面する困難は多岐にわたります。

▽企業側の対応の難しさ
発達障害は障害者雇用枠で配慮を得やすい一方、LGBTQ+としてのあり方への理解や対応は、制度化が進んでおらず、企業によって対応が分かれるのが実情です。

▽開示の難しさ
特に転職の場合、「なぜこれまで仕事が続かなかったのか」と問われた際、発達障害による特性が影響している場合もあれば、セクシャリティに関する葛藤やストレスが関係している場合もあります。両方が関係しているケースもあり、短時間でその背景を理解してもらうのは容易ではありません。

当事者たちの選択

現代の職場では、発達障害や性的マイノリティといった多様な背景を持つ人々が働く場面が増えています。しかし、障害の特性や性自認・性的指向を職場でどのように伝えるかは、それぞれに悩みや工夫が必要なテーマです。開示のタイミングや範囲によって、働きやすさや人間関係への影響が変わることもあります。こうした状況の中で、当事者たちはそれぞれに異なる選択をしています。

▽段階的カミングアウトという選択
ノンバイナリー(自分の性自認を男性と女性のどちらかに当てはまらないと認識している人)でASDの佐藤さん(仮名・24歳)は、入社時に発達障害のみ開示し、職場で信頼関係を築いた後、性自認について少しずつ伝えました。「最初から全てを理解してもらうのは難しいと感じた」と佐藤さんは語ります。半年かけて上司との関係を築き、業務でも成果を出してから、ようやく性自認について話すことができました。「信頼関係があれば、理解しようとしてくれる」という確信が、カミングアウトの後押しになったといいます。

▽両方オープンにする道
レズビアンでADHDの田中さん(仮名・28歳)は、理解のある企業を探し、両方をオープンにして働く道を選びました。「隠し続けるストレスで体調を崩した経験から、最初から全てを伝えることにした」と田中さん。面接では両方の配慮について具体的に話し合い、入社後も定期的に上司と面談の機会を設けています。田中さんは「オープンにできる環境では、本来の力を発揮できる」と実感しています。

▽片方に限定する判断
障害者雇用枠で働くゲイ男性の鈴木さん(仮名・30歳)は、職場での合理的配慮は発達障害のみ求め、性的指向はプライベートに留めています。「職場には業務に関わることだけ伝えれば十分」という鈴木さんの個人的な判断です。LGBTQ+同士の繋がりの場は職場外にあり、「仕事とプライベートを分けることで、心のバランスを保っている」といいます。

 支援者・企業に求められること

こうした多様な背景を持つ人々が安心して働くためには、どのような支援や環境が必要なのでしょうか。

LGBTQ+と発達障害の両方を持つ人の存在を想定した支援が必要です。2021年には東京・新宿に、日本初となるLGBTQ+など多様性にフレンドリーな就労移行支援事業所「ダイバーシティキャリア」が開設されました。専門の相談員を配置し、多様な性にまつわる困難や悩みにもきめ細かく対応しています。

▽柔軟な対応
カミングアウトのタイミングや方法、必要な配慮の内容は個人差が大きいため、画一的なマニュアルではなく個別対応が望ましいです。

▽安心して相談できる環境づくり
人事担当者や産業医、相談窓口が多様性に関する基本知識を持ち、偏見なく対応できることが重要です。近年は、LGBTQ+と障害の両方に対応した転職支援サービスも登場しています。

▽当事者同士のつながり
社内コミュニティで経験を共有できる環境があると、心理的安全性の向上や支援につながります。オンラインコミュニティで全国の当事者とつながることもできますので、調べてみてください。

   ◇   ◇

二重マイノリティとして働くことは困難を伴いますが、当事者は自分なりの方法を模索しながらキャリアを築いています。

多様性支援とは、一人ひとりの「その人らしさ」を尊重し、複雑な背景を理解することです。

 企業や社会は、個別の支援を組み合わせることで、全ての人にとって安心して働ける職場環境を作ることが求められます。その実現のためには、当事者個人の努力だけでなく、社会全体の理解と制度設計が不可欠です。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

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