誰もが魚や動物にアクセスできる社会に―。岡山大大学院ヘルスシステム統合科学研究科修士課程2年の堀内涼太郎さん(24)が、水族館や動物園になかなか足を運べない人たちに、現地にいるようなリアルな映像を届ける事業「オンライン水族館・動物園」に乗り出した。ペットが飼えない人向けには生き物の〝飼い主〟になる仕組みを用意。8月、岡山大発ベンチャー「Aqzoo(アクズー)」を立ち上げ、全国の施設と準備を進めている。
ライトを浴びて優雅に泳ぐクラゲ、華麗にジャンプするイルカ、餌を食べるエイ…。大きなスクリーンに映る生き物に、子どもたちがくぎ付けになっている。
7月下旬に行われた岡山大教職員の子どもたちを招いた催しで、全国の水族館で撮影した映像を披露した。北海道の研究施設とオンラインでつないで毛ガニがかまぼこを食べる様子も生中継。子どもたちは「海の中にいるみたい」「えさを食べているところを初めて見た」と歓声を上げた。
事業計画では、連携する水族館や動物園の生き物の映像をリアルタイムとオンデマンドで配信。高齢者施設や病院などにいて外出制限がある人に提供するほか、一般の個人や団体も視聴可能にし、「実際に見てみたい」と思ってもらうことで来館につなげることを狙う。基本は有料で、自治体や企業の協力によって負担を抑える枠組みも整備する。
飼い主になる構想は、法的な所有権は保持できないものの、水族館や動物園から飼育の裏話を聞いたり、えさをプレゼントしたりと、有料で特別な体験ができるようにする。
堀内さんは岡山理科大動物学科を卒業後、岡山大大学院に進学し、起業部の部長を務めている。岡山理科大の同級生らが就職した水族館、動物園が、物価高騰や入場者減少で苦境に立たされていることを知り、入場料だけに依存しないビジネスモデルをつくろうと発案した。
堀内さんは「施設の新たな収益の柱を確立するとともに、誰もが生き物にアクセスできる社会インフラをつくりたい」と意気込む。将来は、水族館や動物園が少ない国での事業展開も目指す考えだ。