Aさんは、2歳年上の夫と思春期の息子と暮らす40代の専業主婦です。家族仲は良好で、週末には3人で買い物に出かけ、年に一度は家族で旅行しています。夫婦仲も良好で、記念日にはささやかなプレゼントを交換したり、若いころと同じようにいかないまでも人並みに夜の生活も送っていました。
そんなある日、Aさんは夫がテーブルのうえに置き忘れていたクレジットカードの明細を目にします。そこには月に数回、数万円単位の請求が並んでいました。少し怪しさを感じたAさんは明細に書かれていた支払先を調べ、そこが風俗店であることを突き止めます。
このことを夫に尋ねると悪びれる様子もなく、「男にはこういう付き合いも必要なんだ、性欲なのだから仕方ないだろう」と口にします。謝罪の言葉もなく、開き直る態度にAさんは愕然としました。夫の風俗通いを知ったとき、妻はどうすればいいのでしょうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞きました。
怒りや悲しみといった感情を夫にぶつけないように
ー夫が風俗通いをやめられないのはなぜでしょうか
Aさんの夫のように「男の性欲だから仕方ない」と考える男性も少なくないと思われますが、その言葉を鵜呑みにしてはいけません。もちろん性的な欲求もあるでしょうが、それ以上に根深い要因として考えられるのが承認欲求です。
風俗店では、お金を払えば「お客様」として扱われ、女性から褒められ感謝されチヤホヤされることで、お金と引き換えに手軽に「承認欲求」を満たすことができるのです。夫が家庭や職場で「稼いで当たり前」「頑張って当たり前」といった存在になっていたとしたら、風俗で癒しを求めたいと考える可能性もあります。
ー夫の風俗通いを知った時、取るべき行動は何ですか。
裏切られたと感じ、深く傷つくのは当然です。ただし、その怒りや悲しみをそのまま夫にぶつけても、心を閉ざして逆に反撃されてしまうかもしれません。また男性の中には風俗を、ゴルフやマッサージに行くのと同じような感覚でいる人もいます。浮気ではないと考え、「そこまで怒られる理由がわからない」という認識の人もいるでしょう。
まずは冷静に「私はあなたがそういうお店に行くのはとても悲しい」という自分の気持ちを伝え、話し合いのテーブルにつく姿勢を見せることが、解決への第一歩となると考えます。
ー風俗通いをやめてもらうために、妻ができることは?
大切なのは、夫が「風俗に行かなくても家が一番だ」と思える環境を作ることです。「いつもお仕事ありがとう」「あなたのおかげで生活できる」など、意識的に感謝の言葉を伝えてみましょう。これだけでも、夫の心は満たされるはずです。
妻が夫を思いやり、愛情を持って接することができれば、「仕事」としてサービスを提供する風俗店の店員よりも、何にも代えがたい価値を提供できるはずです。
どうしても収まらない怒りや悲しみは、夫にぶつけるのではなく、専門家やカウンセラーに吐き出しましょう。あなたの心は整理され、冷静に夫と向き合うことができるようになるはずです。
◆木下雅子(きのした・まさこ)行政書士、心理カウンセラー
大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、顧客を支えている。