30代のAさんは、ある夜、妻の不倫を知ります。きっかけは妻の入浴中、彼女のスマホに表示された通知画面です。そこには妻が職場の同僚とおこなっている愛の囁きが綴られていました。
Aさんが妻を問い詰めると、妻はその場で泣き崩れて謝罪を始めます。妻の話を聞きながら今後を考えたAさんは、まだ幼い娘のためにも妻との関係を再構築する決意を固めました。しかしその後、Aさんはこの時の決意を後悔することになるのです。
例えば、妻が残業でたった30分帰宅が遅くなるだけでAさんは「もしかして今も不倫しているんじゃないか……」と考え、妻を責め立ててしまいそうになります。何とか妻を責め立てないように我慢はするものの、妻のスマートフォンにGPSアプリを入れて常に行動を把握しないと不安から日常生活を送ることができません。さらに深刻だったのは、夜の夫婦生活です。Aさんが妻の肌に触れようとした瞬間、見知らぬ男に抱かれている妻の姿が脳裏をよぎり、激しい吐き気に襲われてしまいます。
頭では許すと決めたのに体と心が拒絶反応を起こす矛盾に、Aさんは精神的に追い詰められていきました。この終わりのない苦しみから抜け出す方法はあるのでしょうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞きました。
夫が感じる「拭えない不安」の正体
ー不倫された夫が抱える、特有の苦しみとはどのようなものなのでしょうか?
相談に来る男性の話を聞くと、「妻は自分だけを愛している」「妻が浮気するはずがない」という思い込みを持つ傾向が見られます。不倫によりその信頼が裏切られることでプライドがズタズタに傷つきます。
また、女性が「心の浮気」を許せない傾向があるのに対し、男性は生物学的な本能として「体の浮気」を許せない傾向が見られます。これは「お腹の子が自分の子かどうかわからない」というオスとしての本能的な恐怖に根ざしているといわれます。
そのため、妻が他の男性と関係を持った事実に対し、「汚された」「生理的に受け付けない」という強烈な嫌悪感を抱きやすいのです。
ー再構築を決意しても、夫が妻を責め続けたり、過度な束縛をしてしまったりするのはなぜですか?
これも男性の本能的な部分が影響していると考えられます。妻の心が一時的に他の男性に向くことは許せても、体が他の場所へ行ってしまうことには耐え難い不安を感じるためです。
そのため、妻の体を自分の手元に置いておきたいという欲求から、過剰な監視や束縛をしてしまうのです。しかし、感情に支配されて「お前が悪い」と責め続けたり、GPS監視し続けたりすることは、ご自身にとっても苦しいことですし、良い解決にはつながりません。
ー夫が妻を再び信頼できるようになるためのステップを教えてください
まずは「相手(妻)はコントロールできないが、自分はコントロールできる」と割り切ることです。監視や束縛をやめ、代わりに「自分自身の魅力を高めること」にエネルギーを向けてみてください。
具体的には、ジムに通って体を鍛えたり、部屋の整理整頓に取り組んだり、子供と一緒に遊ぶ時間を増やしたりすることです。
また、暇な時間があると嫌な想像をしてしまうため、なるべくスケジュールを埋めて暇を作らないことも重要です。嫉妬に狂う夫よりも、魅力的になった夫を見るほうが、奥様が惚れ直す可能性はずっと高くなるでしょう。
◆木下雅子(きのした・まさこ)行政書士、心理カウンセラー。
大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、お客様を支えている。