肝硬変は、一度発症すると治療方法がほとんどなく、放置していると命に関わる病気です。また、肝臓は、異常が起きていても自覚症状がでにくく、何らかの症状があるときにはすでに病気が進行していることがほとんどです。肝硬変の発症の原因には、肝炎ウイルスによるものや過度な飲酒によるものなど、いくつかの原因が存在しますが、肝臓の異常を早期に発見し、できるだけ早期に適切な対処をすれば肝硬変を予防したり、進行を遅らせたりすることができます。この記事では、肝硬変の原因や症状、検査方法や予防方法などについて詳しく解説します。
肝硬変とは
肝硬変とは、肝臓が長期間にわたってダメージを受け続けることによって、肝臓が硬くなり、次第に小さくなってしまう深刻な病気です。肝硬変によって肝臓が硬く、小さくなると、門脈からやってくる血液の流れが滞るようになり、肝臓の機能がさらに低下するという悪循環に陥ります。これにより、体内の有害物質や栄養を処理できなくなり、その結果、食欲不振や倦怠感、黄疸や腹水などさまざまな症状を引き起こし、命を脅かすのです。さらに肝硬変が進行すると、肝臓がんの罹患リスクも高くなります。
肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれ、症状を自覚しにくく、知らない間に肝硬変になるケースが少なくありません。しかし、検診などで早期に異常を発見し、適切な治療を受けることで病気の進行を遅らせることができます。
肝硬変の原因
肝硬変は、肝臓が長期的にダメージを受けることで細胞に炎症が起き、進行していきます。肝硬変のきっかけとなるダメージには、以下のようなものが知られています。
・アルコールの摂取によるもの
・肝炎ウイルスへの感染によるもの
・自己免疫性の病気によるもの
・薬物などの摂取によるもの
それぞれ詳しくみていきましょう。
▽アルコールの摂取
長期にわたるアルコールの摂取によって、肝臓の細胞破壊が進行し、やがて肝硬変に至るものです。通常、少量のアルコールを摂取しても肝臓を傷めることはあまりありませんが、日本酒換算で1日3合、ビール大ビン3本、ウイスキーシングル6杯以上のアルコールを5年以上にわたって摂取しつづけていると、肝臓に深刻なダメージを与え、肝硬変に移行するリスクが高くなります。
2007年ごろまでは、アルコールの飲みすぎによる肝硬変は、肝硬変患者の約13%程度でしたが、近年その割合が増え続けており、2018~2021年には、肝硬変患者の約35%にまで増えています。
※出典:国立国際医療研究センター肝炎情報センター
▽肝炎ウイルスの感染
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスへの感染により、肝臓の細胞が破壊され、治療しないまま進行すると肝硬変に至ります。これらのウイルスは、主に血液を介して人から人にうつります。注射器の共有や針刺し事故、性交渉などによって、本人が気づかないうちに感染していることもあります。
▽自己免疫性の疾患
本来、自分の身を守るための免疫が、何らかの原因によって自分の肝臓や胆管(肝臓と胆嚢(たんのう)をつなぐ管)などの細胞を攻撃して破壊してしまうことで、肝臓がダメージを受け、肝硬変に至ることがあります。根本的な原因は解明されていませんが、中年以降の女性に多いといわれています。
▽薬物などの摂取
薬物(薬剤)の摂取によって、肝臓に炎症が起こり、肝臓がダメージを受けることがあります。程度はごく軽いものがほとんどですが、劇症肝炎といって、短時間の内に肝臓の大部分が大きなダメージを受ける重篤なものもあり、肝硬変に進行することがあるため注意が必要です。