暖かな春がやってきましたね。嬉しい反面、辛い花粉症に悩まされている方も多いと思います。
日本では春になると、主にスギやヒノキの花粉が大量に飛散しますが、筆者が住むフランスでも花粉症を発症することはあるのでしょうか?
結論から言ってしまうと、フランスにも花粉症は存在します。
この記事では、フランスにおける花粉症について、原因となる植物、気象条件との関係、フランス人の花粉症に対する意識、などを日本と比較しながらお伝えします。
フランスの花粉症って?主な原因植物と飛散時期
日本では、春に多く飛散するスギやヒノキの花粉症に悩まされている人が多いですね。
スギは年が明け、2月頃からシーズンが始まり、3月頃にピークを迎えます。ヒノキはスギよりもやや遅れて飛び始め、4月頃にピークを迎えます。
スギ・ヒノキ花粉のシーズンが終わると、5月〜6月頃は北海道でシラカバ花粉が、関東から九州にはイネ科の花粉が飛散します。
その他の季節にも、8月~9月頃は東北から九州でブタクサ花粉、9月~10月頃はほぼ全国でヨモギの花粉が飛散するなど、ほぼ一年中注意が必要です。
一方、フランスで主に影響を及ぼすのは、シラカバやイネ科植物、ブタクサといった花粉です。
2月〜4月頃は、北フランスやアルプス地方に樹木花粉(シラカバやヒノキなど)が多く飛散します。
春から初夏(5月〜7月頃)には、イネ科花粉(イラクサなどの干し草)がフランス全土に、夏から秋(8月〜10月頃)にかけては、草本花粉(ブタクサなど)が南フランスを中心に飛散します。[※1]
日本では春のスギ・ヒノキ花粉が最も影響を及ぼしていますが、フランスでは原因植物や時期に違いがありますね。
フランスはとても広いので、国内の地域によってもその影響は変わってきます。
フランスと日本、花粉症の有病率と意識の違い
日本では、花粉症の有病率が年々増加しており、約10年ごとに10%程度ずつ増加しています。2019年の調査では、42.5%の人が花粉症にかかっているとされており、花粉症対策が社会全体で重要視されています。[※2]
一方、フランスでは花粉症は「アレルギー性鼻炎(rhume des foins)」と呼ばれ、一般的なアレルギーの一種として認識されています。
フランスでも花粉症を含むアレルギー性鼻炎の有病率は、過去30年間で4倍に増加し、現在では人口の25%以上が発症していると言われています。
ただこの数値は、花粉だけでなく、ダニや猫などを由来とするアレルギー性鼻炎も含んだ数値なので、花粉症の有病率はこれよりも少ないと考えられます。[※3]
日本と比べるとまだそれほど有病率が高くはないせいか、あまり花粉症が社会問題化しておらず、マスクをしている人もほぼいません。
これには、文化的にマスクをつける習慣がないことも挙げられますが、そもそもフランスの花粉が日本ほど大量に飛散しないことが影響しています。
私は小学生の頃から花粉症ですが、フランスに住み始めて以来、それほど花粉に悩まされない春を過ごしています。
くしゃみや目のかゆみで花粉を感じる日もありますが、日本にいた頃とは比べ物にならないほどで、かなり楽です。
ただ、フランスでも都市部を中心に年々増加傾向にあるそうなので、今後はどうなるのか油断はできませんね。
花粉の飛散と気象条件との関係
花粉の飛散は、気温、風、湿度、降水量などの気象条件に大きく影響を受けます。花粉が飛びやすい条件には、主に以下の3つが挙げられます。
① 「晴れて気温が高い日」
晴れて気温が高い日は、花も開きやすくなる上、上昇気流が発生しやすく、花粉が舞い上がりやすくなります。
② 「空気が乾燥して風が強い日」
湿度が高いと、花粉が湿気を吸って重くなるため、遠くまで飛びにくくなります。一方、空気が乾燥して風が強い日は、都市部から離れた森林からも花粉が飛んできやすくなるため、いっそう注意が必要です。
③ 「雨の翌日以降や気温の高い日が2~3日続いた後」
雨の翌日以降は、雨の日に飛散しなかった分と、その日に飛散する分が重なって、より多くの花粉が飛びやすくなります。さらに、雨で地面に落ちた花粉が舞い上がることもあり、いっそう飛散量が多くなるといわれます。また、気温の高い日が2~3日続いた後も花粉がより多く飛びやすくなります。
日本では、乾燥した晴天の日に花粉がよく飛ぶのに対し、湿度が高い梅雨時期には飛散が減少します。
また、春一番などの強風が花粉を遠方まで運ぶこともありますね。
一方フランス南東部では、ローヌ川沿いに地中海に向かって吹き下ろす、冷たく乾燥した強風「ミストラル」が吹くと大量の花粉が飛散する、とも言われているそうですよ。
フランスの花粉症対策とは
フランスでも日本と同様に、薬局で購入できる抗ヒスタミン薬や点鼻薬などを使用しながら症状を抑える方法も一般的ですが、フランス人は、あまり薬に頼りたくないという考えの人も多いです。
そのような方は、花粉症の症状に効果があるとされるエッセンシャルオイルを使ったケアをしたり、喉に違和感を感じる場合は蜂蜜入りのハーブティーを飲むなど、より自然な方法を取り入れているそうですよ。
ただし、様々な媒体において「花粉症の症状改善が期待できる」として紹介されている情報の中には、科学的根拠が明確でないものも含まれています。
もし参考にされる場合は、よくご自身で調べてご判断ください。
また、フランスでは、アレルギーリスクに影響を及ぼす可能性のある空気中の生物学的粒子の含有量を研究する国立の機関「RNSA(https://www.pollens.fr/)」が花粉飛散情報を発信しており、リアルタイムの花粉情報を確認することができます。
花粉症の予防や、症状を抑えるにはまず、マスクやメガネを装着したり、花粉飛散の多い時間帯(昼前後と夕方)の外出を控えるなど、花粉を避けるように心がけましょう。
また、花粉がつきにくい素材の服を選ぶ、手洗いやうがい、洗顔、洗髪で花粉を落とす、洗濯物や布団の外干しを控える、など花粉を家に持ち込まない工夫も大切です。
花粉症の方にとって、この季節は憂うつに感じてしまいがちですが、花粉情報をこまめにチェックし、適切な対策をとることで、春の心地よい陽気や自然の美しさも楽しめるはずです。
自分に合った方法を見つけながら、少しでも快適にこの季節を乗り切りましょう!
<出典>
[※1]vidal.fr
https://www.vidal.fr/maladies/nez-gorge-oreilles/rhinite-allergique-rhume-foins.htm
[※2]厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001203112.pdf
[※3]Stallergenes Greer
https://www.stallergenesgreer.fr/environnement-de-marche