子どもがバレンタインデーにチョコレートをもらうと、親としてはちょっとした喜びを感じるものです。しかし、その後のホワイトデーのお返しを考えたとき、思わぬ悩みが生まれることもあります。奈良県在住のDさん(30代)は、息子が初めてチョコをもらったとき、まさかそこから"ホワイトデー地獄"が始まるとは思いもしませんでした。
ホワイトデーのお返し、気合いを入れすぎて
Dさんの息子が小学4年生のバレンタインデーの日、クラスメイトのMちゃんから可愛らしいラッピングのチョコレートを受け取りました。Mちゃんは、たまにDさんの家にも遊びに来る存在で、義理チョコだと分かっていても「うちの息子、少しはモテるのかも?」とDさんは少し嬉しくなりました。
息子も「ママ以外の人から初めてチョコをもらった!」と照れながらもまんざらではない様子。親子でほほえましい気持ちになりました。
バレンタインデーにチョコをもらったからには、きちんとお返しをしなければ…と考えたDさん。Mちゃんの母親とは一緒にPTA役員をするなど親しくしていたのもあり、日ごろの感謝も込めて、ホワイトデーにはちょっと奮発。有名百貨店の限定商品でパッケージも中身も可愛いスイーツをプレゼントすることにしました。
家から少し遠い有名百貨店に開店前から並んでゲットしたスイーツです。「これなら気が利いてるし、息子の株も上がるに違いない!」と張り切って用意した結果、ホワイトデー当日のMちゃんは大喜び。Mちゃんの母親からも「素敵なお返しありがとうね」と感謝のLINEが届きました。
Dさんも「喜んでもらえてよかった」と一安心しました。しかし、これが思わぬ悲劇の始まりだったのです。
翌年、まさかの“チョコバブル”に困惑
息子が小学5年生になると、バレンタインデーにMちゃん以外の女子からも次々とチョコレートが届き、5つももらって帰ってきました。しかもMちゃん以外の4つは、なんと「手作り」のもの。
「息子が急に持てるようになったのか?」…いや違う。母から見ても息子は決してモテるタイプではない。これにはなにか裏があるのではないか…。
そしてDさんは気づいてしまいました。昨年のMちゃんへのホワイトデーのお返しが“良すぎた”ことが理由ではないかと。
Mちゃんには悪気はなかったと思います。しかし何気ない友達同士の会話の中で「あの子にチョコをあげると、とても可愛いお菓子がもらえるらしい」との噂が広まり、結果としてホワイトデーのお返しが期待できる“優良ターゲット”として息子が認定されてしまったのかもしれません。
Dさんはお返しの準備に頭を悩ませることになりました。
お返しは…「なんでもいい」わけにはいきません
「今年は5個ももらった!」と得意げな息子ですが、なぜか「手作りチョコ」には一切手を付けようとしません。「あとで食べる」と言って、冷蔵庫にしまい込んでしまいます。
「お返しどうするの?」とDさんが聞いても、息子は特に気にしておらず「なんでもいいよ」と答えるだけ。しかし本当に「なんでもいい」わけにはいきません。しかも、なけなしのお小遣いを出して、市販のチョコを買ってくれたMちゃんと、おそらくみんなで作ったであろう、適当な手作りチョコを渡してきた女子たちと、お返しに差をつけてもいいものか気になります。
「出来が良くないといっても、わざわざ手作りのお菓子をもらったのに、そこら辺で売ってる駄菓子を返すのは気が引ける…」
「かといって、おしゃれなホワイトデーラッピングのスイーツって意外と高い…」
Dさんはそんなジレンマに苦しめられながら、息子のプライドを傷つけないような“適切なホワイトデーギフト”を探し回ることになりました。
試される男子ママのセンス
正直、小学生男子の母親にとって、バレンタインデーは単なる「チョコをもらう日」ではありません。その裏には、ホワイトデーという大きな試練が待ち受けています。息子のために、何をお返しするべきか…その選択は親に委ねられていて、まるで男子ママとしての“センス”が試されているような気さえします。
Dさんは最終的に、Mちゃんとほかの女子たちには同じものをお返しし、Mちゃんの母親には、日ごろの感謝を込めて家族で食べられるミニケーキを用意しました。
◇ ◇
最初は微笑ましく思えた息子の“モテ期”も、ホワイトデーのお返しの負担を考えると、決して手放しで喜べるものではありません。「友チョコ」も「義理チョコ」も、親にとっては単なる悩みの種なのです。
その後、バレンタインデーが近づくたびに、Dさんは心の中で「今年は誰からももらいませんように…」と祈るようになったそうです。