なぜ「子ども・子育て支援金制度」が必要なのか? 背景と課題
政府は2024年以降、「異次元の少子化対策」として児童手当や育児休業給付をより充実させ、多くの人が利用できるようにしてきました。「子ども・子育て支援金制度」は、こうした支援策を継続的に実施するための財源として位置づけられています。
しかしこの制度に対して、問題があるとの批判もあります。
「医療保険のために支払っている保険料なのに、子育て支援に使われるのはおかしい」という声があります。支払うべき負担金が、医療保険料に上乗せする形となるためです。本来、社会保険は「負担と給付が直接結びつく」しくみですが、今回の制度はその考え方にそぐわない面があるといえます。
負担の公平性の面でも課題が残ります。所得が高くなるほど負担額が増える傾向があるものの、「低所得者層への負担軽減が不十分では?」との指摘もあります。さらに、事業者側の負担がどの程度増えるのかも、今後の焦点となるでしょう。
さらに、独身者や若年世代への出産・育児への影響も懸念があります。負担増によって、結婚や出産をためらう人が増えてしまう可能性があるためです。少子化対策の財源を社会全体で支えるのは理解できる一方で、出産・育児を妨げる影響はないかも、今後議論されることになりそうです。
子育て支援は社会全体で取り組むべきテーマです。その財源をどのように確保するかについては、できる限りエビデンスにもとづき、議論を続けるべきでしょう。
「独身税」という誤解を広めるのではなく、どのように支え合うべきかを冷静に議論することが求められています。
【参考】
▽読売新聞オンライン「少子化対策で「こども特例公債」発行へ…財源確保まで不足分を穴埋め」
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230524-OYT1T50050/
▽子ども家庭庁「子ども・子育て支援金制度における給付と拠出の試算について」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/ba94b64b-731f-4f48-97ba-b54a76b0aeb6/7fb56c33/20240329_councils_shienkin-daijinkonwakai_04.pdf
▽柳瀬 翔央「子ども・子育て支援金制度の創設をめぐる議論-子ども・子育て支援法等改正案の国会論議(2)-」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2024pdf/20240920079.pdf