茨城県内で行き場を失ったワンコたちが収容される茨城県動物指導センター。特に元野犬が多く、警戒する表情で人間を見つめています。
そんな中、1匹だけデーンと構えるワンコがいました。名前はホップ。ふてくされているのか、人間に全く警戒しないのか、その真意を読み取れないのもまたこのワンコで、聞けばもう1年半以上センターにいるのだそうです。一見オスのようですが、実際はメス。当初は他の元野犬同様、人間に強い警戒心を抱いていましたが、センターの職員さんにいち早くなつき、手で触れても怒らなくなったそうです。
自ら外に出てきた
保護犬猫カフェ・PETSの代表は、当初別の3匹のワンコを保護するためにセンターを訪れていました。しかしどうもこのホップの表情を見て「なんか気になる」と思い、予定を変更してホップを含む4匹を引き出すことに。
保健所やセンターから引き出される際のワンコは、人間への警戒心から大暴れしたり、その場から動かなくなることが大半ですが、なんとホップは「なんすかー? 私どこかへ連れて行ってくれるの?」とばかりに自らテクテク歩いてきました。
「自分から出てくるんかーい!」とツッコミを入れたくなるほどでしたが、さらに代表がホップに接してみると、うれしそうな表情を浮かべ警戒心ゼロ。何枚も何枚も写真を撮ってあげると「何枚撮るのよ、この姉さん!」といった表情でまたニコニコ。元野犬ではかなり珍しく、人間大好きな性格の持ち主でした。
ひょうきんな一方、従順で賢い
PETSのフリースペースには複数の保護犬が過ごしていますが、他のワンコとのコミュニケーションもバッチリな上、すぐに環境になじんでリラックス。元野犬の多くが嫌がるハーネスも素直に応じ、「ハーネスね。私、いったん寝たほうがつけやすいんじゃない?」と自らゴロンと寝転ぶという、柔軟で賢い一面も見せてくれるようになりました。
その人懐っこさと、どこかひょうきんな振る舞いから、ホップを前にした人は全員ファンになるという独特の魅力を持っていましたが、ある日のこと、それまでにはない意外な一面をホップが見せてくれました。
乳飲子を前にホップが自らママ役を買って出た
生まれて間もない乳飲子をPETSで保護したことがありました。乳飲子は成犬以上に繊細なお世話が必要ですが、なんとホップが、そのママさん役を買って出てくれたのです。
いきなり目にした乳飲子を前に、特に人間が教え込んだわけでもなくホップが自分の体を使って積極的に温め始めたのです。
その様子は「自分の子どもに接している」ようにも見えますが、ホップはセンターで避妊手術を受けており、繁殖機能はありません。しかし、ホップの本能がそうさせるのか、乳飲子を大切に自分の体で覆い、外敵から守らんばかりの姿を見せたのでした。
いつもは明るくひょうきんなホップの真面目で優しい一面に、関係者は「そっとしておこう」と見守ることに。優しいホップに守られながら、乳飲子たちは元気にすくすく成長を遂げていきました。
里親募集には出さず、保護犬カフェの看板犬に
PETS代表にとって当初は引き出す予定ではなかったホップですが、当初の「なんか気になる」の直感が的中し、周囲を和ませ、そして心優しい性格の持ち主だったというわけです。
この特別な縁と、ホップの明るく優しい性格から里親募集には出さず、「PETSの看板犬」として以降、活動を続けることになりました。
経験のない場面や人間の小さな子どもがいる場面では、テンパってしまうホップですが、これから経験を重ねることで、さらに立派な「保護犬の星」に成長してくれるように思います。
今日も周囲のワンコ達と仲良く笑顔で過ごすホップ。これからもホップらしく明るく元気に過ごしてほしいものです。
保護犬猫カフェPETS (NPO法人smalllifeprotection)
https://www.slpjapan.com/