天気予報で「明日の気温は平年並み」「2月上旬並みの寒さ」といった言葉を聞きますが、これらは「平年値」と比較して表現しています。平年値は過去30年間の平均値で、10年ごとに更新されます。今回は、平年値の集計方法と、平年値と比較する場合のポイントを解説します。
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「平年値」とは何か?
平年値とは、気温、降水量など各気象要素における過去30年間の平均値です。その時々の気象(気温、降水量、日照時間など)や天候(冷夏、暖冬、少雨、多雨など)を評価する基準となっています。
平年値とは「30年分の統計による平均的な値」を気象庁が定義するのですが、毎年更新するものではありません。平年値は、WMO(世界気象機関)の定めにより「西暦末尾がゼロの年までのデータが揃った段階で更新」に従い算出されます。すなわち2001年、2011年、2021年……と10年ごとに更新されます。2024年現在は「1991年~2020年の平均値」を平年値として使用しています。
平年より高い・低いはどう決めるか?
大阪の1月の気温を例に説明します。上図は、1991年から2020年の30年分の1月の平均気温を低い順に並べたグラフです。点線はこれらから算出された平年値を表しています。
気温の低い順から数えて11位~20位の範囲が「平年並」の基準となっています。それよりも高い気温は平年より高く、低ければ平年よりも低いです。
1月の大阪で「平年並み」となる基準は5.9℃~6.4℃であるため、例えば、1月に6.3℃が予想された場合、平年値の6.2℃より高い6.3℃であっても、「平年並み」となります。
同様に、6.5℃は平年並みの上限である6.4℃より高いため「平年より高い」、5.8℃は平年並みの下限である5.9℃より低いため「平年より低い」となります。
冬の気温はどのくらい上昇している?
上図は、札幌、東京、新潟、大阪の、1月の平均気温の推移を示したものです。点線は長期変化傾向(トレンド)を表した回帰直線です。100年間で平均的にどのくらい変化したのかを直線で表しています。この直線の傾きを見ると、この4都市では100年で+1.8度~+3.7度上昇していることが分かります。
もしこのような上昇傾向が今後も続くようであれば、2021年~2030年に発表される長期予報などの平年値と比べる予想では、1991年~2020年の平均値を「平年値」として使用しているため、「平年より高い」予報が出やすいと考えられます。
ただし、年ごとにグラフを見ると、年によって1月の平均気温は異なることが多いため、平均気温が上昇してきているとはいっても、その冬の気温が平年より低いか高いかはその年次第になると考えられます。
過去4年の1月の平均気温と平年値を比べると?
過去4年間の1月の平均気温と平年値を比べると、平年より低い年もあれば、平年並みの年や平年より高い年もあります。
もし、長期予報などで冬の気温が「平年より高い」という予想があったとしても、あくまでも「1月の平年値よりも高い」という意味のため、冬らしく、寒く感じるでしょう。
この冬も、日々の天気予報を確認しながら、その日に合った防寒対策を心がけてみてください。
動画解説:植田純生