京都市が1993年に始めた「市長への手紙」制度。市長に市政の要望や疑問をぶつけることができる、いわば目安箱だ。年間3千超の声が寄せられ、市ホームページからのほか、市営地下鉄の主要駅に設置されている専用封筒で投かんできる。しかし記者には気になることがあった。地下鉄山科駅の封筒ケースがいつも空なのだ-。
山科駅の封筒ケースは改札を入ってすぐの壁際に設置されている。空っぽに気付いたのは今年の初めごろ。「たまたまだろう」と思いつつ、月に数回、駅を利用する度に中身を確認するも、肝心の封筒が入っているのを見たことがない。
空なのは山科駅だけなのか。ケースがある主要駅をいくつか巡ると、北大路駅には1通、烏丸御池駅は1~2通入っていたが、四条駅は空っぽ。竹田駅や京都駅はケースがなく、駅員に声をかけると封筒を手渡しされた。ケースは区役所や図書館など一部の公共施設にもある。
しかし、空っぽでないケースも、入っている封筒は数枚程度。担当する市広報課に理由を尋ねると、「一度にごっそり取っていく人がいる」ため、ケースに入れる封筒は数枚に抑え、なくなり次第、職員が補充しているという。山科駅についても「たまたま空になったタイミングと重なったのでは」(担当者)。市交通局も「定期的に駅員が巡回、補充している。空の場合は駅員に声をかけてほしい」とする。
“手紙”と縁遠い現代の通信事情も関係ありそうだ。市は2004年、専用封筒に加え、市ホームページからの受け付けを開始。昨年度に寄せられた3462通のうち、封筒が使われたのは802通で、残り8割はホームページからだった。封筒の発行枚数も年々減らしており、市広報課は「封筒は補完的役割」と位置付ける。
ただ、市民が市長に意見する同制度において、誰もが無料でアクセスできる専用封筒の意義は大きい。新市長が就任して半年余り。そろそろ疑問や要望が湧いてきた市民は少なくないのではなかろうか。
市の担当者は「読みやすさの面ではホームページから送ってくれる方が正直ありがたい」と事務方の苦労をにじませつつ、「どちらで届いても、手紙は担当課が確認し市長に渡しています」と強調した。