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「逃げるんですか?」本気になれない仕事…続けるべきか迷ったとき “逃げ”ではない、渋沢栄一の『蟹穴主義』【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

1万円札の顔である渋沢栄一は、近代日本経済の父としても知られています。そんな渋沢栄一が遺した書籍『論語と算盤』は、現代社会においても重要なことを教えてくれるようです。

『漫画 君たちはどう生きるか』の作者・羽賀翔一さんと、漫画家・ワタベヒツジさんの作品『漫画 論語と算盤』は、渋沢栄一の名著を現代にあてはめて漫画化した作品です。そこからの抜粋エピソードである同作『第2章 士魂商才』では、2人のサラリーマンの想いが描かれています。

同作の主人公・ショウタは、かつて上司の佐竹に仕事を教えてもらっていました。どれだけショウタがヘマをしても、佐竹がコーヒーをおごってくれると、また頑張ろうとやる気が出たのです。

ショウタは佐竹に感謝しつつも、現在の佐竹には仕事への情熱を感じないことに不満を抱いていました。ショウタは「おれはあなたに失望してるんです…もっと真剣になってくださいよ」と佐竹に言います。

後日、いやみたらしい上司がショウタのもとへやってきて、その朝、佐竹が辞表を出してきたことを伝えました。上司は「上に立つ者には冷酷さも必要だからねぇ」と笑うものの、まったく知らなかったショウタはおどろきます。

ショウタは急いで佐竹のもとに駆け寄ると、佐竹はいつものように自動販売機の前でコーヒーを飲んでいました。言葉に詰まるショウタに、佐竹は落ち着いた表情で「大丈夫 まだまだ俺は…〝真剣〟だよ」と話します。

佐竹は、常に成果とスピードを求められる会社に、今の自分はあっていないのではと考えていました。休憩所で人の話を聞いて誰かを励ますのは好きでしたが、それは数字にはつながりません。

佐竹は今まで悩んでいたことを、ショウタに言われてけじめがついたようです。「おれがここで最後におごるコーヒーでも飲んでくれ」と、佐竹は自動販売機に1万円札を入れました。

そのとき、ショウタは「見返してやろうと思わないんですか、嫌な上司どもをっ」「逃げずに向き合いましょうよ!」と佐竹に言います。すると自動販売機の中から「この男が逃げていると決めつけるのだ?」と声がして、そこから男性が出てきたのです。

「わしには立派な決断を下したようにみえるがな…」と話す謎の男性は、実は現在ショウタが先生と呼び、『論語と算盤』について教わっている人でした。先生は佐竹を指し、「この者は自らと向き合い考え抜き、ふさわしい蟹穴を見つけたのだ!」と言います。

論語と算盤における『蟹穴主義』とは、蟹はみずからの甲羅に似せて穴を掘り、そこを住み処とすることに由来しています。つまり人間も自分の進むべき道を決めたら、ひたすら身の丈にあった穴を掘り進めていくべきという考えなのです。

先生はショウタに「己を武装することが強さではない」「心にたったひとつの〝真剣〟を持ち、それを磨き続けることこそ強さ」と話します。渋沢栄一にとって、その真剣こそが『論語(孔子やその弟子たちの言葉を記した書)』でした。その物差しがあったからこそ、それを持って自らの心に向き合ったのです。

ショウタは「たったひとつのゆるがないもの…」と先生の言葉を噛み締め、ネクタイを緩めます。椅子に座ったショウタは、「もう少しここで話しませんか?今日はおれがコーヒーをおごるんで…」と佐竹に話すのでした。

読者からは「蟹穴という考え方もあるのかと勉強になった」「自分の身の丈って難しい…」などの声があがっています。そこで、作者の羽賀翔一さんとワタベヒツジさんに話を聞きました。

あたりまえの日常を普通に生きている人たちに読んでほしい

【羽賀翔一さん】

―『漫画 論語と算盤』として、渋沢栄一の名著を漫画にしようとしたきっかけを教えてください

大谷選手の有名な曼荼羅チャートに「論語と算盤を読む」と書かれていたことを知り、まず興味を持ちました。渋沢栄一さんは「経済の人」と勝手にイメージを持っていましたが『論語と算盤』を読むと、どんな分野の人にも通じる生きる姿勢が書かれており、漫画にすることで深く理解したいと思いました。

―なぜ羽賀さんとワタベさん、両方が『漫画』という形で作品化を望んだのでしょうか?

これまでとは違うやり方で漫画をつくれないかと模索していました。お互いがアイディアを出し、明確に役割を決める分業ではないやり方で制作することで、今まで自分が描いてこなかったキャラクターや彼らの表情が出てくる感覚がありました。これからさらにそのスタイルを強化していきたいと思っています。

―同作のなかで、とくに注目してほしいポイントがあれば教えてください

自動販売機から渋沢さんが出てくる演出は、漫画らしい演出になったのかなと思います。ただ描いたあとに気づいたのですが、自販機では1万円札は使えないのですね。きっとお札を投入して、戻ってくるタイミングでドアが開いて渋沢さんが出てきたんだと思います(笑)。

1コマだけ描かれた渋沢少年のコマも描いてよかったと思っています。きっと渋沢さんにとって『論語』というものは単なる書物ではなく、このコマにある凛とした緊張感を持って向き合う対象で、その中で心を磨きつづけたのだと想像しながら描きました。

【ワタベヒツジさん】

ー『漫画 論語と算盤』は、ワタベさんと羽賀さんの共作という珍しい形で描いたとうかがっています。具体的にはどのようなスタイルで描いたのでしょうか?

はっきりとした役割分担はなく、雑談を重ねながらつくっていく感じでした。お互いの日常の気づきや、日々の出来事を話して、「論語と算盤」と重なる部分を見つけてネームに落とし込んでいくことが多かったです。

具体的な作業としては、僕が叩き台を出して羽賀さんが推敲して完成させていくことが多いです。ペン入れも、羽賀さんがキャラの最終的なペン入れをするので、羽賀さんの描く表情を楽しみにしながら作業をしていました。

一渋沢栄一の思想という少し硬いテーマを、漫画として届けるために工夫したことを教えてください

抽象的な思想の話で終わらずに、読んでいて実感のあるストーリーになってほしかったので、なるべく身近な感情や体験から物語をはじめるように意識していました。そこから原作の思想に触れていくことで、現実と地続きの感覚で「論語と算盤」の思想を感じられるように意識しました。

ー同作は、どのような人に読んでもらいたいですか?

あたりまえの日常を普通に生きている人たちに読んでほしいです。

説教臭さがなく、読みやすいものにして、なるべく多くの人に手に取っていただけることを目指しました。そして今作は自分の家族や友達、身の回りにいる人たちのことを想像しながら作りました。自分の身近な人の感想もすごく気になります。

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