2018年、北九州市動物愛護センターに複数の野犬が収容されました。性格が穏やかで健康なワンコは程なくして保護団体や一般譲渡でセンターから引き出されましたが、警戒心が強かったり、持病がありそうなワンコはそのまま残され、刻一刻と収容期限が迫っていました。
期限が過ぎれば、最悪殺処分になります。福岡県のボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねすの代表は、残された野犬のうち、最も体の状態の悪いワンコを引き出し、お世話することにしました。
ゆきという白い毛並みのワンコです。見るからに重篤な皮膚病を抱え、また他の野犬と格闘した跡なのか体中にいくつもの傷を負っていました。
強いワンコに負けてエサを満足に口にできなかった?
皮膚病の治療のため、ゆきを丸刈りに。毛に覆われていて当初は分からなかったものの、その体はガリガリでした。エサを与えると表情を変えて一心不乱に食べます。
ゆきの様子を観察すると、とても優しい性格であることがわかりました。穏やかな性格が災いし、熾烈な生存競争を強いられる野犬社会でゆきが「下の立場」となり、強いワンコに負けてエサにありつけず、自分もエサを食べようとすれば、すかさず攻撃を受けてきて、傷だらけになったように思えました。
人間を前にして突然寝転ぶその理由は?
お世話を受けることになった団体代表の家ではすぐに馴染み、家族や先住犬とも争うことなく仲良しに。数年かけ皮膚病の治療を完治した後は、本来の綺麗な真っ白の被毛が生えて、本来のゆきのかわいい表情を見せてくれるようにもなりました。
保護から5年。ゆきは代表の家で日々うれしそうな表情を浮かべ、「甘えさせて」「遊んで」と楽しそうに過ごすようになりました。
ゆきには「独特の甘え方」があります。それは「寝転んでなでてアピール」。人間を前にすると、自ら地べたに寝転びます。
先住犬たちはそんなゆきの様子を横目に「何してるワン?」と不思議な表情を浮かべますが、寝転んだゆきをなでてあげると大喜び。そのままウトウトと眠り込んでしまうこともあります。
赤い糸で結ばれた「家族」と出会えますように
野犬の多くは「他のワンコとのコミュニケーションには長けているが、人間にはなかなか懐かない」と言われることがあります。しかし、ゆきはその説を覆す「人間大好き」なワンコで、今日も代表の家で明るく元気に過ごしています。
ここまで馴染んだ代表の家が、ゆきにとっての「ずっとのお家」にも映りますが、実は今なお、ゆきを迎えてくれる里親希望者さんからの応募を待ち続けています。
野犬としてこの世に生を受け、熾烈な争いを経験してきたゆき。これから先の犬生では、安心して過ごせる「本当のお家」が必要です。1日も早く、ゆきと赤い糸で結ばれた「家族」と出会えると良いなと思いました。
わんにゃんレスキューはぴねす
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