国内で唯一無二『筆を使わない墨絵アーティスト』 指先で蘇らせる伝統…個展で作品が完売するほど話題に

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世界的にも珍しい筆を使わない墨絵アーティストの荒川颼さん(46)が国内外で注目を集めている。自然との共存共栄をコンセプトに「龍」「馬」「鳳凰」などをモチーフにした躍動感あふれる作風が特徴。海外からの評価も高く、いまや個展を開けば完売するほどだ。9月28日には「高野山世界遺産登録20周年記念」イベントに出演し、ライブパフォーマンスを演じる。

唯一無二の筆を使わない墨絵師

墨が生きている。その圧倒的な迫力に目を奪われる人が多いのではないか。伝統的な手法やルールに縛られることなく描き続けた作品群。荒川さんは国内で唯一無二の筆を使わない墨絵師として知られる。

「芸術にバリアはないということを伝えたくて、僕はここまで諦めずに描き続けて来ました。いまを生きている、本当に生きているんだ、というのを僕の作品から感じてもらえればうれしいです」

栃木県栃木市出身。自由な家庭に育てられ、幼いころから美術、音楽に触れ合った。書を始めたのは15歳のとき。しかし、特に力を入れたのがピアノで繊細な指のタッチは、いまの墨絵に通じるものがあるという。大学卒業後にオーストラリアへ語学留学。この間も水墨画を中心に描き続けたが、英語を学んだことで世界が広がった。

「ピアノと墨絵は似たところがある。指の動きひとつで違ったものになるし同じ作品は生まれない。僕にとって墨絵は世界との共通語であり、作品はタイムトラベルでもあるんです。感情や時間が反映されている」

独特の世界観を持つ荒川さんが取り組んでいる筆を使わない技法は「指頭画」または「指墨」と言われ、筆の代わりに手指を使って描く。通常は水墨画で荒川さんは「爪や指の腹や指先、場合によっては手のひらや手の甲、肘なども使う」と話す。

もともとは中国の唐の時代に生まれた技法だそうで清の時代に高其佩が出て指頭画を大成。山水画、人物画、花鳥画とさまざまな画題を指で描いて評判となった。日本では柳沢淇園が始めて南画に影響を与え、池大雅が受け継いで大成した、とされる。

伝統文化を自分の手で復活させたい

しかし、やがて勢いを失い、衰退していった。この現状を打破しようと使命感に燃え、このジャンルを受け継いだのが荒川さんだ。ほぼ道なき道だったが、独学で10年以上もトライアンドエラーを繰り返しながらいまに至る。

「水墨画は白黒の世界でそのためか、学校の授業でもやってません。若い世代に墨のアートを知ってもらいたい。墨でこれだけ表現できるんだ、というのを次世代に伝えたい。その思いでここまで来ました。墨絵を生き返らせるのは自分しかいない、という思い。あと、日本のアートは閉鎖的で出る杭は打たれる世界なので、そこも変えていきたい」

主な代表作は「龍神ティアマト」「朱雀乱舞」「桃源の馬」「流鏑馬~Yabusame~」など。大胆さと繊細さを兼ねた独特なタッチは見た瞬間に「躍動感」「力強さ」「迫力」が伝わってくる。特に平和をテーマにした「朱雀乱舞」の複製画は2022年6月にスペインにある世界遺産サンパウ病院で常設展示され、国連ユネスコのパリ本部ミロホールでも展示された。

また2023年5月にはモンゴルに国賓として招待を受け、日本人墨絵アーティスト代表として「モンゴル芸術親善大使」に任命された。さらにイタリアのローマにあるクロチェッティ美術館にも荒川作品が展示されることも決まった。

これを受け、当然のように国内での評価も高まり、2023年7月に開催された地元栃木市での「常識を逸脱したイベント型アート個展」では2日間で40作品が完売。その後、大阪、東京でも評判となった。もちろん、今年に入っても精力的に活動しており、6月には京都市中京区の「京都創造ガレージ」で個展を開催。7月にも栃木市の蔵の街スタジオで個展「飛龍」を開き、知る人ぞ知る存在として人気を博している。

様々なジャンルとのコラボにも力を入れており、9月28日には「高野山世界遺産登録20周年記念」イベントに出演。和歌山出身のサクソフォーン奏者のNazuki’さんが奉納演奏することになっており、 そのゲストとして津軽三味線「吉田兄弟」の吉田健一さんとともに招かれ、墨絵パフォーマンスを実演することも決まっている。

「テーマは世界平和。地震で苦しんだ能登や台湾のチャリティも兼ねています。世界遺産という素晴らしい場所でのイベント。ぜひ、応援してください」

 そんな荒川さんのもとには企業からロゴ製作の依頼も増え、最近はメディアへの露出も多くなっている。その一方で墨絵教室なども精力的に開催するなど地道な活動も続けている。雅号の「颼」は自由な風が吹く様子を表す。その名の通り、今後ますます注目されそうな墨絵アーティストだ。

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