連日行き場を失ったワンコが収容される東京都動物愛護センター。
センターに収容される犬猫は、若い月齢から優先的に引き出される傾向があります。引き出されない犬猫はハイシニアだったり、重篤な持病を抱えていたり、咬傷犬だったりするのが通例で、最悪殺処分となります。
2023年8月、引き出しの名乗りがあがらず、行き場を失ったワンコがいました。オスのパピヨンで、名前はマシューくん。複数の保護団体が引き出しを見送った理由は月齢でした。推定13〜15歳。パピヨンを含む小型犬の平均寿命がおおむね15歳ほどだとすれば、そう長くは生きられないかもしれません。
「うちでお世話します」と名乗り出たボランティアのKさん
マシューくんがセンターに収容されたのは2023年6月。飼い主の元でこの月齢まで過ごしていたのに、ある日突然センターに収容されることになった心情を思うと、いたたまれなくなります。マシューくんを知った団体、アイドッグ・レスキュー隊の代表は、なんとかして救い出すことはできないかと関係者に「看取る覚悟で預かれる人はいないでしょうか」と一斉メール。推定13〜15歳がネックになるのは承知の上でした。
関係者からは前向きな返答はありませんでした。「残念だけど、私たちにできることは限られていたのかもしれないな」と肩を落とす代表でしたが、Kさんという預かりボランティアさんが「うちでお世話します」と決断しました。
「これで救うことができる」と涙を堪え、代表はその足でマシューくんを連れ帰ることにしました。
シャイながらも素直でかわいい性格
Kさんの家に迎え入れられたマシューくんはハイシニアとは思えぬほど元気。白内障はありますが他には重篤な持病はなく、明るい性格のワンコでした。当初は顔を触られることを嫌がりましたが、Kさんに信頼を寄せるようになると、むしろなでてほしそうな表情を浮かべるように。
自分から積極的に感情表現をするタイプではありませんが、Kさんや他のワンコが寝ていると、そばに来て体をするり寄せ一緒に眠る夜もありました。シャイではあるものの素直でかわいいマシューくんを救い出せたことを、Kさんは心の底から喜びました。
看取ることになるかも…と思われた矢先に届いた吉報
ただし、団体がマシューくんの里親を募集しても良縁はなかなか見つかりません。ハイシニアの保護犬を第二の犬生に繋げることの難しさをあらためて痛感しました。
「このまま看取ることになっても良い。人間の愛を感じてもらいながら旅立ってほしい」とKさんは話しつつ、「終の住処」を見つけてあげたいと思っていました。
その矢先、マシューくんに吉報が届きました。「うちの家族になってほしい」という里親希望者さんが現れたのです。
再び奇跡を起こし「終の住処」を掴んだ
里親希望者さんは、マシューくんと性格がよく似たパピヨンを看取った経験があり、「どうしてもうちに迎えたい」と語ります。初めの人間の前では、ついガウガウしてしまうマシューくんは、この里親希望者さんにも当初噛みつこうとする素ぶりを見せました。それでも、里親希望者さんは「全く問題ありません。大丈夫です!」と心強い一言。
慎重に慎重を重ねた一定期間のトライアルを経て、マシューくんはこの家に正式譲渡。ハイシニアにして、ついに「終の住処」をつかみました。
何度も奇跡を起こし、幸せの赤い糸を手繰り寄せたマシューくん。優しい里親さんのたっぷりの愛情を受け、今日も幸せに過ごしているそうです。
アイドッグ・レスキュー隊
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